作:池田むかう / 松田正隆戯曲講座作品

明治36年、金沢。長土塀・武家屋敷と商家や民家が軒を接する町に、四高の教授・西田幾多郎とその家族が引っ越してきた。母・妻・子ども、そして姉と弟と書生たち。幾多郎を取り巻く多くの人間。家長として西田家を背負い、まわりの人間たちの人生をも背負い、奮闘する・・・。家族が揃って暮らした、最初で最後のこの時代は、幾多郎にとって生涯忘れることのできない月日となった。
この作品は去年公演されたものの再演だそうです。
しかし、ただの再演ではなく、今回はなんと四組のユニットが用意されています。
地元金沢の演劇人の集まった「芸術村ユニット」。
文学座による「文学座ユニット」。
そして、そのそれぞれが混ざった「シャッフルユニット」が二つ。
どれも見てみたいのですが、経済的な問題からそうもいっていられない。ではどれにするか……と考えた末、どうせこれからもメインで見ていくのは金沢の演劇シーンなことだろうし、地元の役者さんを見よう、と決めました。
それに、芸術村ユニットは金沢演劇人の中でも滅多に揃わない豪華な顔ぶれだという話も聞いていましたし。
かっちりとしたセットがあってその中で登場人物が動く、いわゆる新劇と呼ばれるタイプのお芝居でした。
なんというのか……とても堅実なのは分かります。でも、その、こじんまりとまとまりすぎているというか、しっかり作られている分、見ていても安心感が先立ってしまうというか。
エンターテイメントよりも芸術性をとっているからでしょうか。
うまくまとめられすぎていて、生の迫力や熱といったものが希薄だったように思います。
いや、でも、役者さんは前評判通り上手かったです。
こうしたスタンダードといえばきわめてスタンダードな劇だと、役者さんの力量がもろに見えるのが少しおもしろかったです。