作・演出:風李一成 / 劇団KAZARI@DRIVE

吉江黒太はトラブルに巻き込まれていた。
思えば、三流の音大を卒業するにあたり交響楽団ならぬ公共の楽団を紹介され、民謡や山中節ばかりを演奏させられていたところに、わずかばかりの給料を温泉芸者と駆け落ちするコンサートマスターに持ち逃げされるなど、これまでトラブル続きの人生であったのだから、落胆よりも「またか」という諦めの気持ちの方が強かったのだが、実はそのトラブル慣れした彼の心情こそ、この状況をさらに悪い方向へと加速させる遠因に他ならないことを当然のようにその時の彼には知る由もなかったことを、残念ながら我々には知る由もなかったのだ…。