監督:ニック・カサヴェテス
2004年/アメリカ

とある療養施設にひとり暮らす初老の女性。老いこそ迎えてはいるが、たたずまいも美しく過ごす彼女はしかし、情熱に生きた過去の思い出をすべて失ってしまっている。そんな彼女のもとに、定期的に通う初老の男性がいる。デュークと名乗るその男は、彼女の気分が比較的よさそうな時を見計らい、物語を読み聞かせてやっているのだ。語られるのは、古き良き時代の、アメリカ南部の小さな町の、きらめくような夏の恋物語──。
予告編を見て、前評判を聞いて、落ちまで分かってたのに。それでもやはり、涙腺はこらえ切れませんでした。
物語自体は別に大したことないです。
階層に引き裂かれる男女、親の反対、妨害、すれ違い。恋物語としてみるなら、特に目新しいものもなく、スタンダードといって差し支えないと思います。
で。
初老の男性が同じく初老の女性に、この恋物語を読み聞かせるわけですが、予告編やCMを見れば、そこに与えられた仕掛けは簡単に看破できます。
じゃ、なにが良かったのか、と考えると、「愛」の一言に尽きると思います。
「私はどこにでもいる平凡な人生を歩んできた平凡な男だ。でもただ一つだけ誰にも負けなかったことがある。私には全身全霊を傾けて愛した人がいる。それだけで充分だ。」
つまりはそういうことですね。
ただひたすらにひたむきに彼女を愛した彼。彼を愛した彼女。
大きく美しい愛を抱えた二人は、やがてひとつの奇跡を起こします。
そう、こういう物語の流れで“奇跡”とかいうと、いかにも予定調和的な安っぽいハッピーエンドを思い浮かべるかもしれませんが、そうではありません。
ひとつの愛が生まれ、育まれ、終焉を迎えるまで。
それを描ききった作品でした。
そういえば、エンドロールのあとにケミストリーが出てきたんですけど、興醒めも甚だしく。なんでああいうことするのかが理解できません。
っていうか、なんでケミストリーの歌がイメージソング? わけ分かんね。
きみに読む物語
http://www.kimiyomu.jp/