監督:李相日
2005年/日本

バスジャック事件をきっかけに知り合った3人──デスクワークにうんざりの警察官シンゴ、自由奔放で大胆な男テツ、自室で秘密の実験を続ける謎めいた女サキ。3ヶ月後、偶然再会したテツにシンゴは日ごろの鬱憤をぶちまける。「世の中、想像力が足んねえんだよ」テツの言葉に同調するシンゴ。“復讐するは我にアリ!”──テツがトイレの壁に落書きし、憂さ晴らしの不満解消ゲームは幕をあける。次々と舞い込む依頼を請け負い、いい知れぬ万能感に浸るシンゴ。いつしか2人のゲームは、想像もしなかった方向に…。
世界を一瞬で消す方法がわかりました。
「世界を〜」という文句がすごく引っかかっていて、主演の三人もなかなか魅力的だし、ずっと見てみたかった作品でした。
世界を一瞬で消してしまう方法なんてひとつしかないだろ、と思いながらも、ちょっと期待していたんですが、やはりというかなんというか予想通りでした。でも、だからといっておもしろくないのかというと、それは全然違って。
似ているようで全然似ていない三人の、それぞれのアプローチを絡ませ収束させていくところが、とてもおもしろかったです。
シンゴは、世の中と自分に苛立ちと不満を感じています。
テツは、世の中に不満と諦めがない交ぜになった虚無感を持っています。
サキは、世の中に絶対的な絶望を抱いています。
世の中を見限っているといえばそういえなくもない三人で、一見似ているようですが、このスタンスは大分違います。
詳しくは見てもらうのが一番良いと思うのですが、簡単に言うと、シンゴは世の中に対する希望の裏返し、テツは世の中に対する嘲笑、サキのは世の中に対する侮蔑、のような感じです。
そして、不満と不満と絶望は出会い、ひとつの結晶となります。
あるエピソードによって、テツは、世の中となにより自分に対する激しい苛立ちと不満を抱くようになり、身に余る絶望をも背負うことになります。
まさに結晶化。結実。
畳みかけるような後半の展開がとても良かったです。
ラストシーンは思わず目を瞠りました。
なるほど、そうか、と。
一歩を踏み出した者と踏みとどまった者。
果てしない絶望と幽かな希望。
具体的で象徴的。なんだか変な日本語ですが、そんな風に感じました。
あーそういえば。
これが2006年初映画。十日を過ぎるまでなにも見ていなかったのだなぁ。
いまチェックしたら、見たい作品がすごい数になっている……。
今年もがんばろう。
スクラップ・ヘブン
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