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監督:小沼雄一

希望ヶ丘女子高等学校の生徒たちは、学園祭の準備に忙しい日々を送っていた。放送部の部長、新谷マナミもその一人だが、マジメすぎる性格ゆえ、3年生が部活を卒業するフィナーレにふさわしい、朗読劇の演目をなかなか決められずにいた。
そんな時マナミは、放送部の顧問から、「バスケ部でもめて退学になった三塚チユキが放送部へ入部する」と告げられる。チユキは学校を1年留年した問題児ではあるが、謎めいた雰囲気を持つ美少女で、同級生の江里口フタバと禁断の関係を持つ。
部長と部員という関係で2人の距離が縮まるマナミとチユキ。
次第にマナミもその魅力に惹かれ、気づけば目で追う日々。
喉の具合が悪い時にくれた、ソーダ味のキャラメル。
体操服に着替える時のドキッとした甘酸っぱい気持ち。
放送室で2人きりの時にチユキがしてくれたメーク……1つ1つの思い出がマナミの心を占領していく。だが、そのすぐそばに、マナミをいつも助けて励ましてくれる、幼なじみで同じ放送部所属の森野アイがいた。

チユキを思うマナミ、マナミを思うアイ、そしてチユキの恋心。
不安定で危うい少女3人たちが織り成す、物語の結末とは――。


良かった。実に良かった。
「好き」という気持ちの、なんと切なくも甘酸っぱいものか。
きゅんきゅん悶えてしまいました。

もともとがフェティッシュな写真集が原案のためか、スカートから伸びる足とかうなじとか口元のアップとか、ところどころそういったカットが差し挟まれるんですが、これがうまい具合に効いていた。
誰のものか判然としないカットが入ることで、見ている側が過度にキャラクターに入り込まないようになっていました。スクリーンのあちらとこちらに適度な距離感が保たれていた、というか。
その絶妙の距離感があったおかげで、誰かひとりに入れ込みすぎることなく、登場人物みんなのみずみずしさと切なさ、甘酸っぱさが画面一杯に満ち満ちていたというわけでした。

文化祭直前、発表会を控えた放送部、そこにあらわれる闖入者。
部活動を主体にして、甘酸っぱくも熱い群像劇にすることもできたのでしょうが、今作は部活動を舞台にしながらも、あくまでも少女たちの思いが主軸となって展開します。
レズビアン、というのとは少し違うのかな。思春期特有の同性に対する強い感情。舞台が女子高だからか、それが特に強くあらわれている。
すれ違う好意の行きつく先は、まぁ、上手くいくわけないんだろうなとは思って見ていましたが、わかっていても切ない。そして訪れるクライマックス。文化祭の朗読劇。押し込められ続けた感情がついに圧力に屈服し、噴出した感情が呼び寄せるカタルシス。

なんだけど、このクライマックスの朗読劇が少々いただけない。

いままで散々隠して秘めてきた気持ちを、直接「好き」って言葉にしちゃうのはちょっと安っぽすぎる演出でした。
せっかく演目の『女生徒』が序盤から登場していたのだから、物語の途中で特定のフレーズに暗喩を持たせ、朗読劇は最後まできちんと朗読劇のままで終わらせてほしかった。
「私もアイのこと好きだったらよかったのにね」
マナミがぽつりとつぶやく、このセリフがこの物語そのものをぎゅっと凝縮した言葉であるだけに、この一言を際立たせるためにも朗読劇を破綻させてほしくなかった。
観客はなんだか妙に気持ちの入った朗読劇だな、そんな感情移入するような演目でもないのにな、というような違和感を覚えながらも、真実には気付かない。
そんな中、部員たちはいままでのことを思い出し、うっすらと気づく。でも言葉にはしない。
そして。
はっきりと口にはしないけれど、アイの気持ちがマナミに届き、マナミの気持ちがチユキに届き、チユキの気持ちは空に溶け、本人たちだけが噛みしめる。みたいな。
そういうのが良かったなー。

しかし、これだけクライマックスにダメ出しをしておきながらも、やはり私はこの作品は傑作だと思います。
それというのも、この朗読劇のあとがきちんと描かれていたからです。
普通の、というか、よくある単館系の映画だと、体育館でアイが告白し、それを受けマナミも自分のチユキに対する思いを口に出し、それをダメ男のカーステレオで聞いたチユキが静かに涙を流す。
このシーンで暗転、のちエンディング、だろうなと思うんです。
ていうか、見ていて、僕はそう思いました。
そうしたらば、そのあとがあるんだもん。

学校中どころかFMラジオの電波に乗ってかなわない思いを広く告白しちゃったら、なにもかも終わってしまったかのように思えるじゃないですか。
けれど、それはリカバリーできない類のものではなかったのです。
ここもやはり高校生ならではの、みずみずしさとしなやかさ。
決して思いが損なわれることはなく、純化して心に残る。
得も言われぬさわやかな空気がきちんとそこにはあって、恋愛感情的には誰も救われないし成就しないんだけど、当然人生それだけじゃないんだよ、ということが実感できる。

嗚呼、青春ですよ。青春。

スクールガール・コンプレックス ―放送部篇―
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