心優しきヴェラ・ドレイク。
他人を想うその心根が純粋であることが、皮肉にも彼女自身を塀の中へと追い込むことになります。
堕胎と隣人愛、そしてなにより家族愛。
言葉にしきれないほどのものにあふれた作品でした。
この作品が一線を画すのは、堕胎というショッキングな題材を扱ったにも関わらず、その是非についてどうこう言うようなものではなかったことです。
望まない妊娠と、その前に立ちふさがる分厚い法律の壁。たとえその壁を越えたとしても、そこに待っているのは高額すぎる手術費。
押しつけがましいところはなにもなく、ただ素直にそうした現実を見せているだけでした。
ヴェラ・ドレイク役のイメルダ・スタウントン。
このひと、すごい。
予告編で、
「イメルダ・スタウントンの演技に心を動かされない人がいるならば、その人は脈を調べてもらった方がいい。その人の心臓は止まっているに違いない!」
というBBCの評が出ていて、その大仰さに少し苦笑してしまったのですが、どうしてどうして。大仰だなんてとんでもない。それ以上のすばらしさでした。
もっとも印象に残っているのは、警察で27年間はずしたことのなかった結婚指輪をはずすシーン。
あの、身を切り刻まれるような悲痛さ。表情といわず仕草といわず、もう、画面全体からあふれ出る感情に息が詰まりました。
少し無理をしてでも見ておいて、本当に良かったです。
ヴェラ・ドレイク
http://www.veradrake.net/