監督・脚本:是枝裕和
「誰も知らない」製作委員会/2003年

父親の違う四人の兄妹と、その母親。
2DKのアパートの中、閉じられた世界で、親子は幸福に暮らしていた。そんなある日、短い書き置きとわずかな現金を残し、母親が姿を消す。
なんとか生活を維持していく子供たち。
帰らない母、苦しくなる生活。
そして──。
彼らは法律的にも社会的にも存在しない存在ですが、生きていました。
彼らは母親に捨てられた存在ですが、限りない愛にあふれていました。
彼らは誰も知らない存在ですが、“ここにいること”を自分たちが知っていました。
生命力と幸福感と希望と失望に彩られた物語。
ベランダで無軌道に繁茂する植物が、ただ純粋に生きようとする子供たちと重なって見え、涙が出ました。
羽田に向かう直前、子供だけの楽園じみた(生活の苦しさなどとは全く関係なく、あそこはまさしくあの兄妹にとっての楽園だったと思う)空間が、母親からの現金書留と「頼りにしてるわよ」という短いメッセージによって、容赦なく現実に引きずり落とされます。
そして、モノレールでエンドマークを打たずに、コンビニで残り物をもらって帰るというなにも変わらない生活が繰り返される様を見せつけられたことで、物語の余韻はより深く広く染みわたります。
残酷だとか可哀想だとかそういうんでは決してなく、ただ、強くて美しくて少しだけ淋しい。涙が出るのは、自分があたかも“五人目”であるかのような錯覚とともに、彼らに共感したせいなのだと思います。
タテタカコさんの挿入歌、「宝石」がとても良かったです。
CD買って、ゆっくりと聞いてみようと思います。
余談ですが、今日、一日だから映画安かったんですね。
普段多くても二十数人くらいしか見たことのない映画館が満席でしたよ。
混むの嫌だから平日のお昼を狙ったんですが、まるっきり逆効果でした(…)。
誰も知らない
http://www.daremoshiranai.com/