緑川ゆき / 白泉社

国吉は学校帰り、川で生徒手帳を探す優等生・池田と出会う。そこに手帳を拾った女生徒・室園が現れ、彼の手帳に殺人計画が書かれてる事が明らかに…!?
うわ。やっべ。この短編集、すごくいい。
表題作の「アツイヒビ」。これ、張られた伏線とかどんでん返し的な展開よりも、中心にでん、と据えられたテーマが。も、泣けてくるよ。
人を信じるということ。
その気高さと難しさ。
ああ、本当にこの人はなんて作品を書くんだ。
「父親は失ったけど 友人ができたよ」
池田くんのこの言葉が字面以上に重くて重くて重すぎて、胸にずしんと沈んで動かない。
でも、それ以上にすばらしかったのが「花の跡」。
うわぁ……なんて静かでうつくしい作品。
どうしよう、言葉にすればするほど逃げていくんじゃなかろうか。
「──本当にあそこはゴミばかりだよ
……ああ、けどひとつだけ
宝物があるよ」
モノローグでしか語られないこの台詞が、心臓ど真ん中を撃ち抜く弾丸となってラスト四ページで襲いかかってきます。言葉も音もなにもなく、パタパタと落ちた涙の透明さがたまらなくうつくしい。
どっぷりはまったなぁ。