緑川ゆき / 白泉社

妖怪が見えるという秘密を抱えた少年夏目。彼は祖母・レイコの遺品である妖怪達との契約書「友人帳」を手にする。以来、妖怪達から追われる羽目に。用心棒・ニャンコ先生と共に妖怪達に名前を返す日々を送ることになった夏目は──!?
緑川さんの作品は、もう何回も書いてますが、人を信じること、が核としてあると思うのです。
で、これまでの作品の中で培われ育まれたものを踏襲し、さらに熟成させ発展を遂げたのが今作。
人を、というか、「誰か」を信じるということ。そこには自分も故人も妖怪も会ったことのない人も含まれてしまうのです。そう、もっと懐が深くなってるんですね。
それが、きれいに描かれている。
第二話、一種の道祖神的な妖怪が最後の信仰者の他界とともに力を失い消滅してしまう場面。ここで、夏目は言います。
「…おれが信仰する 毎日は無理でも拝みに来てやる」
それに対する妖怪の言葉。
「だめだよ夏目 君は私の友人だ」
号 泣 。
信仰ではなく親交が生まれていたのですよ。何気ない一言からあふれでるやさしさは止め処がなく、ただただ身を苛まれることしかできません。
あと、第四話。
もう、これ、切なくて切なくて切なくて、きちんと読み込もうとすると物理的に心臓が痛むんですけど。どうしたらいいですか。ざっと流し読んで全体の流れをつかみ、つらくならない程度に部分部分をちょこちょこ読み込んでるんですが、それでも頭の中でつなげようとすると激しく痛い。
ああ、しあわせってのは、自分ひとりで完結すればするほどに高まっていくけれど、側で見ていると苦しいものだなぁ。