勝田文 / 集英社

舞台は昭和初期。身寄りのないいつきに思いがけない援助の話が舞い込んだ。条件は月に一度手紙を書くこと…。「あしながおじさん」を原作にお茶目な恋を描く表題作他3編収録!
表紙の楚々とした佇まいに目を引かれ、よく見てみると「『あしながおじさん』in昭和日本」の文字……。これで買うなって方が無体ですよ。
一冊まるまる『あしながおじさん』なのかと思ったら、四本収録されている短編のひとつだけがそうで、あとのみっつは全然違うお話でした。
思いがけない誤算。
やはり表題作の「Daddy Long Legs」は良かった。けど、ほかのみっつもかなり良かった。
一粒で四度おいしい。ていうか買う前に裏表紙の文言をきちんと読め自分。
「パーラー」という短編がかなりお気に入り。
このお話に出てくる男も女もイタくて切ないんですが、特に男・大山くんが。もう。
「だから もう何もしてくれるなよな……」
「ありゃ 下心があったから受け取ったんだ」
読みながら胃の腑がしくしくと痛み出してきたり。ああ、切ないなぁ。
「Daddy LongLegs」。
『あしながおじさん』とこの時代の日本との相性はばっちりですね。
髪を切った後のいつきが非常にかわいい。表紙の三つ編みもいいけど、短い方がいつきには似合っています。彼女は身軽なんですね。なにより精神が。だから、見た目も軽やかな
ショートカットがよく似合う。
あと、おじさんの偽名が「平井太郎」のためか、江戸川乱歩がところどころで出てくるのがお茶目でいいです。
もう、こういう出会いがあるから本屋に行くのはたまらない。