吉野朔実 / 小学館

暴力をふるう父。出て行った母。
閉ざされた世界に生きる二人の兄弟。
そんなある日、兄が父を金属バットで殴ったことから
歯車が狂い出す……。
なんというか、帯にある通り、暴力に満ちた生活なのに、どこか美しく、とても静寂に満ちた物語。
吉野朔実の描く物語はみんなそうじゃん、と言われれば、まぁ、そうなんですけど。
静寂を感じる、ということは、それはそれでもう完結している、ということなんだと思います。
どこかが狂ったまま、
どこかが壊れたまま、
完結している世界。
その中で、また、なにかが狂いだし、壊れだす。
狂いに狂いを積み重ね、
壊れに壊れを積み重ね、
そして、また、別の形で完結する。
『少年は荒野をめざす』にはほど遠いですが、吉野朔実の作品は、みな、美しく静寂に満ち、完結している物語ばかりです。