岡本一広 / メディアファクトリー

あたしは、体が見えなくなっちゃう「透明病」。
でも、演劇を続けていきたい。女優になりたい。
くよくよするとき、くじけそうなとき、いつも彼は、そばにいてくれる。
いやぁ、どのエピソードもいいですねぇ。
特に奇を衒ったものではないからこそ、ずしんと響くものがあります。
「透明病」が主眼の第16章「悩んで悩んで…」。
劇中劇の台詞が、そっくりそのまま、主人公の自らが透明であることへの叫びになってます。
誰よりも努力してお芝居をしているのに、透明であるが故、女優への道は果てしなく遠い。お芝居なんて知らなければ、こんなに苦しむこともなかったのに。女優になりたいだなんて、思わなかったのに。
「透明なんて やだよう…」
という言葉が、ぐっと迫ってきます。
男の子と女の子の純粋な気持ちが主眼の第18章「マモルのアダルト体験」。
姉ちゃんに無理矢理合コンに連れて行かれたマモルは、その場の空気に激しい違和感を感じます。
「なんでみんなあんなに必死に楽しそうなフリしてるんだ?」
それに対し、姉は男女の仲なんて、はじめは楽しいけどそんないいことばかりじゃないってことをみんな知ってるからだよ、と返します。
「んなことないだろっ(中略)ふたりでいれば……ずっと!! 楽しいんだろ!!」
「あんたも大人になればわかんじゃない?」
「そんな言葉で片づけんなよっ!!」
ここがすごく秀逸。
“大人”って言葉は便利で、なにもかもをあやふやにするのに非常に効果的です。そんな人間いないのにね。