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川上弘美 / 新潮社
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きんめ鯛を手土産に恋しいタマヨさんを訪ねる“あたし”の旅。
終電の去った線路で、男を思いつつ口ずさむでたらめな歌。
家庭をもつ身の二人が、鴨鍋をはさんでさしむかう冬の一日。
ぽっかりあかるくて深々せつない12の恋の物語。


川上弘美は、長編よりも短編の方が輝いていると思う。
どことなく江國さんに似ている。話の内容が、とか、文体が、とか、そんなんじゃなくて、一瞬の切り取り方が似ているのだと思う。
ここしかない、という瞬間を、びっくりするような鋭利な切り口で突きつける。


「冬一日」と「川」という二編が、ものすごく良かった。
昼休みに読んでいたんだけど、思わず涙がこぼれて困った。慌ててあくびをしたふりをしてページを閉じ、トイレに逃げ込んでしばらく泣いた。


「冬一日」はあらすじにある鴨鍋のお話。
普段は昼間の限られた時間にしか会わない二人が、暮れの日に一日一緒に過ごすというお話。
「川」はある晴れた日に、川原でお弁当を食べてのんびりとするカップルのお話。

どちらのお話も、「いま」をものすごく大切に味わおうとする人たちのお話だった。
そして、その人たちが、なぜ「いま」をものすごく大切に味わおうとしているのかというと、「いま」はいまにしかなくて、どこにもつながらないということを熟知している人たちだから。
未来は「いま」の積み重ねで届くものなんかじゃない。
過去は過ぎ去った「いま」の集積なんかじゃない。
刻一刻と消費される「いま」は、この瞬間に確かに存在して、次の瞬間にはもうどこにもなくなっている。
すべては失われるためにある。
だから、泣きたくなるほど愛おしい。


やばい思い出すだけでまた泣けてくる。
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