作・梨木香歩 絵・早川司寿乃 / 理論社

春。森の奥で思いがけないティーバーティーに招かれるつばき。誰もがやがて忘れてしまう“小さな女の子の時間”を鮮やかにくっきり描く。
絵がとてもきれい。
淡い色づかいでかわいらしいし、すっきりとしていて見やすい。
そして、デザインセンスが抜群。
ページをめくるたび、その画面のシンプルだけど洗練された美しさにほれぼれとします。
そしてその絵と共に紡がれるお話。
すこしふしぎな、でも、幼いころには誰もが持っていたであろう時間をふんわりと描いたお話でした。
絵本というのは極限までセンテンスを絞り込み、文字も画面を構成する絵の一部とし、作者の持つエッセンスを純度100%で届けるようなものだと思います。
それについてあれやこれやと書くのは、なんだかひどく無粋であるように感じます。
だから、多くは語らず、黙して眼を閉じようと思います。
野原の味のするヨモギのお茶、
夕暮れの味のするノギクのお茶、
日なたの味のするカキのお茶、
森の味のするサクラのお茶、
そして、とっておきの
固く巻いた笹の葉の芽が、初めてくるくるほどけたところに溜まった朝露を集めたものである、笹酒。
そんなお茶の振る舞われるお茶会に、招待されることを夢見て。