絲山秋子 / 角川書店

どうでもいいって言ったら、この世の中本当に何もかもどうでもいいわけで、それがキミの思想そのものでもあった──。
表題作「ニート」を含む五編の短編集。
この人は、本当に行き詰まった人間を描写するのが上手くていけません。ものすごく魅力的に見えてしまって。どん詰まりにいて、もうどうしようもないのに、それを肯定する。肯定する。肯定する。肯定する。救いはない。ただ、肯定する。
一言一言がぐさりと食い込んできて、抜けやしない。
「2+1」が特に好きでした。
これは「ニート」の続編であるのですが、ニートの青年と作家の女の関係がすごくいい。心地良い。
友情と呼ぶには冷めているし強すぎる、愛情と呼ぶには熱すぎるし弱すぎる。この関係を表した言葉を、僕は知らない。なんと言うのがもっとも適当なんだろう。「好き」というのは感情であって、関係ではないしね。ていうか、関係性に名前を持たせて安心しようとするのからいけないのか。多分そうなんだろう。
だけどセックスはおもてなしでも見返りでもない。暴力がそうで
ないのと同じように。
作中にある一文。以前にも書きましたが、セックスをただのコミュニケーションのひとつとしか捉えていないことに、ひどく好感を覚えます。
頭では理解しているつもりでも、どうしても自分はそういうスタンスが貫けないので。
図書館で借りている場合じゃないとは思いつつ、書店ではついついためらってしまう。
ハードカバーはやっぱり高いし重いしねぇ。
こういうときこそ、ネット通販の出番かなぁ。