機本伸司 / 角川春樹事務所

「終末には宇宙へ行こう」──ダメでもともと、スペーストラベル!
太陽の活動異常により絶滅の危機を迎えた人類。どうせみんな死んでしまうというのなら、ひと思いに宇宙船を作って飛び出してしまえ!
しかし待ち受けていたのは、予想だにしなかった難問の数々だった……
『宇宙の作り方』『救世主の作り方』ときて、第三作は「恒星間宇宙船の作り方」。
徐々にスケールダウンしているような気もしますが、おもしろい題材を持ってきます、この人は本当に。
ですが、いくらおもしろい題材とはいえ、これはちょっとひどい。
作品の半分くらいはいかにすれば恒星間飛行を可能とするのか、という技術的な話。どんなエンジンなら可能か、そのエンジンのためにはどんな技術が必要か。燃料は何で、動力は何なのか。そういう話が延々続く。
『ニュートン』という科学雑誌があるのですが、その中の「宇宙旅行は本当に可能なのか?」というおもしろ記事をを読んでいるような気分。
僕は似非科学ファンなのでなんとか読めましたが、これは拒否反応を示す人は大勢いるのではないかと思いました。
全体をそうした技術的な話が貫いている以上、そのほかの設定が出てきても奇異な感じしか受けませんでした。
人間とはなになのか、生きる意味とは? とか、登場人物の恋愛とか。こうしたとってつけたようなものはむしろ徹底的に排除した方が良かったと思いますよ。
不自然きわまりない。
それになにより、主人公に魅力がない。
夢だけは壮大な口先だけ男。しかも全力で後ろ向き。人の気持ちに鈍感で頭も悪く、絶対に友人にはなりたくないタイプ。
いくら取り繕ってみても、読み進める内にどんどん醒めていきました。
第一作『神様のパズル』を頂点に、作を重ねるごとに魅力が無くなっていきます。
目の付け所は悪くないのになぁ。
非常にもったいない。