監督:竹中直人
2004年/日本

海を臨む病院に勤める医師・正平の元に、子宮がんを患った未知子が入院してきた。偶然にも未知子は、正平が高校時代思い焦がれた初恋の人、その当人であった。献身的に治療を施しながら、なにかと自分を思い出してもらおうと試みる正平。始めのうちはしつこくされて迷惑気味の未知子だったが、いつしかそんな彼に心を開いていく。
サヨナラから はじまることが たくさんあるんだよ
病と死をメインに据えた恋愛ものです。つい先日見た『8月のクリスマス』も病ものでしたが、こちらはそれとはまったく違う恋愛物語でした。
始めはまったく相手にされないどころか、しつこすぎて嫌がられる主人公ですが、徐々にそのひたむきさにヒロインがほだされ、最後には思いが通じる、という“男の子寄り”のお話。
ここに中年男女(と言うには少し熱量が高すぎるかも)の様々な事情が絡むのです。
どことなく中途半端な距離感。手を突っ込んでみると思わず火傷しちゃうような熱さを秘めながら、表面上はいかにも冷めているような人間関係。
そしてさらに、病と死から生を見つめる視点が加えられる。
全体的には良くできた作品だと思いました。
作中ひとつのキーアイテムとなったのがランプ。
ガラス片を組み合わせて作ったランプで、アルコールランプを中に入れ、その光を透過させて楽しみます。
色とりどりのガラスから見える光は非常に幻想的で、うつくしかったです。
光と影の使い方がなかなかうまいなぁ、と思いました。
影絵のシーンでは、あぁくるなぁ、と思ったとおりの演出で思わずにんまり。ベタだけれども、あのワンシーンで実に多くのことが描けていたと思いました。
しかし。
あのラストはどうだろう。
せっかく途中まで非常に良かったのに。ああいう安易な“お涙頂戴”的なラストはいただけない。
なんでああしなければいけなかったのか、その必然性がくみ取れない。
ああすることで、いままで盛り上がってきたものが無理矢理一つの方向にまとめ上げられたような感じ。
僕は、できるならそのままぱぁっと散らして欲しかった。
あいまいで不器用な恋として終わらせて欲しかった。
手術直前までがとてもとても好きだったので、すごく残念。
せつなさはまったくないけれど、しみじみと胸に染みいる恋物語でした。
サヨナラCOLOR
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