森絵都 / 講談社

あなたと手をつなぐ人がきっと、いる。
真夜中の屋根のぼりは、陽子・リン姉弟のとっておきの秘密の遊びだった。やがて、思いがけない仲間がくわわって……。
登校拒否やいじめ、子供特有の不可思議な距離感を保った人間づきあい。
ついつい重苦しくなってしまうようなテーマを、ライトでシンプルに描いています。主人公の陽子の性格に寄与する部分はもちろん多々あるのですが、それ以上に作者の力量の見事さに目を奪われます。
自分にとってなにが大切でなにが正しいのか、を、すっきりと見せてくれます。
きっとこの作品に描かれる登場人物と似たようなことで悩んでいる子供たちはたくさんいると思います。
これは、登場人物たちと同年代の子が読むとずいぶん救われるんじゃないだろうか。
ラストに出てくるすみれちゃんの言葉がしみわたります。
中学生当時に読んでいればもしかすると気にもとめなかったかも知れませんが、いまは実感としてそれを持っているので、実に強く響きます。
「ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。(中略)でも、ひとりでやってかなきゃならないからこそ、ときどき手をつなぎあえる友だちを見つけなさい」
あたたかい言葉だと思いました。
児童文学はやっぱり良いなぁ。
難しいことを難しく書くことや、簡単なことを難しく書くことはとても簡単で、難しいことを簡単に書くことはちょっとだけ難しい。でも、簡単なことを簡単に書くことはとてもとても難しい。
児童文学は、そうしたとてもとても難しいことをさらりとやってのけるすばらしいジャンルです。いつも感嘆してしまいます。