原作:黒うさP/WhiteFlame 著・イラスト:一斗まる / アスキー・メディアワークス

「大正兇変」と呼ばれる大災害を境に生じた歪んだ世界。怪現象や悪事が横行する新帝都・桜京(おうきょう)を護るため「神憑(かみつき)特殊桜小隊」が立ち上がる。
「小説千本桜の無自覚なディストピア感」を見て、興味を惹かれたので読んでみました。
うん。
軍隊が治安維持を担うということは、おそらくこの世界は軍政下にあるんだろうなぁ。そんで華族の中に特殊能力を持った人間がいて、しかも華族と軍幹部がイコールでもあるようなので、一部選民による権力独占も予想される。
提示された設定をちょっと掘り下げるだけで物語はかなり深くなる余地があるというのに。その辺はまるっとスルー。なるほど確かにもったいねーな、と思いました。
しかし。
そもそもこの作品は世界観がどうのとか物語がどうのとかいうことは端っから問題にしておらず、要はただのキャラクター小説というコンセプトで書かれているので仕方ない、というか、これで十二分に完成しているわけですね。
ただ、キャラクター小説といっても、これは大塚英志の提唱するような「アニメやコミックに直接的な起源のある、非リアリズム的手法で「キャラクター」を描く小説」ではなく、既存のキャラクタにコスプレさせて楽しむ、いわばアイドル映画として書かれた小説、という程度の意味です。
だから設定にどんな穴があろうが、物語がどれだけ陳腐だろうが、全体として驚くほどつまらなかろうが、キャラクタがコスプレしてきゃっきゃうふふしていればそれでいいのです。
というわけで、初音ミクが好き、ボーカロイドが大好き、という人なら大満足、それ以外の人には決してオススメできない作品ですね。
……円城塔とはまったく違う意味で、しかし同じくらいに疲れた……。