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円城塔 / 早川書房

彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める――軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化!



疲れた……。
円城塔ってすごい。
たった1冊の文庫本を読むのに、3週間以上かかったのは初めてだ。


この作品のあらすじを語ることは、非常にむずかしい。
舞台は「イベント」と呼ばれる出来事が起こり、時空間がバラバラになり因果律が様々な形で混乱している世界。
このイベント発生の瞬間、「無数の宇宙が、まるで昔からそうあったかのように、瞬時に生成されたのだとされている。すなわち、無限量の情報がその瞬間に生成された」ということらしい。
なんだかわかったようなわからないような説明ですが、身も蓋もなく一言にしてしまえば、「なんでもあり」ということです。

そして「なんでもあり」だということは、同時にその全ての可能性を否定することも包含しているということであり、なんでもあり=無限の可能性があるが故に、そこにはなんにもない=無が存在するということにもなります。

なんでもあるが故になんにもない、しかし、厳然として宇宙はここに存在している。そこにも。あそこにも。
語られることで宇宙は創造され続け、語り終えることで常に破棄され続けている。
だから、ここで描かれる世界とは小説家そのものを記述した結果であり、ここに描かれる22篇の物語はまさに小説であり小説以外のなにものでもないのです。

うん。わかりにくいな。

ハードSFのアプローチ方法で、超ハードSFの皮を被り、その実、とてつもなく文学的なことを描いている。
実質、この本に収録されている作品は、見た目通りのSF作風から、寓話的なもの、ユーモア小説風のもの、哲学的なもの……と、実に多岐にわたっています。
このフットワークの軽さには目を瞠るばかりであり、驚嘆を禁じ得ません。
いや、ほんとすごいな。


この作品を読んで、その上で『屍者の帝國』をもう一度読んだら、あのときとはまた全然違う感想が持てそうな気がする。
ていうか、先に純粋な円城塔作品に触れる前に、ハイブリッド作品のような変化球を読むのはもったいなかったですね。変化球はストレートがあってこそ、その変化具合がよくわかるのですから。
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