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西尾維新 / 講談社

彼の名は空々空(そらからくう)。
どこにでもいない十三歳の少年。
風変わりな少女、剣藤犬个(けんどうけんか)が現れたとき、
日常かもしれなかった彼の何かは終わりを告げた。
ひどく壮大で、途轍もなく荒唐無稽で、
しかし意外とよく聞く物語は、
そんな終わりを合図に幕を開ける。
人類を救うため巨悪に立ち向かう英雄は、
果たして死ぬまで戦うことができるのか!?

『JOJO'S BIZARE ADVENTURE OVER HEAVEN』と『少女不十分』で西尾維新はもういいかな、と思っていたんですが、書店で平積みされている本書表紙にある「切断王」という単語が引っかかりました。
「切断王」。
なんて厨二な響きなんでしょう。
初期の西尾維新を彷彿とさせられ、ついつい買ってしまいました。

なるほど確かに、これは「戯言」初期の西尾維新に似てるなぁ。
思ったよりおもしろい。
原点回帰に近いような。ミステリ的要素はないけどね。まぁ、『クビキリサイクル』もミステリなのかというとちょっと疑問ですけど。

「戯言」に似てると言いましたが、登場人物の造形や物語の作り方はどちらかというと「りすか」ですね。
「りすか」が魔法少女もののお約束を踏襲した上で、すべてぶち壊しているのと同様、今作はヒーローもののお約束を(以下略)。
というより、わざとヒーローもののお約束を逆視点から構築しなおした、という感じ。
どっちが巨悪だよ。そして誰が英雄だよ。
この構成には一種のカタルシスが秘められていて、自分の中の常識が引き剥がされる感覚が小気味いいです。

最長巨編と銘打っがていますが、中身は第1話~第8話と分割されているので、そんなに気負わなくてもさらっと読めました。皮肉の効いた各話タイトルがまたおもしろかったです。シュールで。

一体どうやって広げた風呂敷を閉じるのかと思いましたが、なるほどどうして。
2000年前後に流行った物語にいわゆる「セカイ系」と呼ばれたものがありました。
簡単に言うと、世界の存亡と主人公の少年少女たちの運命がリンクし、自分の行動しだいで世界を救ったり滅ぼしたりといった結果を引き起こすというものです。
戦闘少女と無力な少年。そしてその少年の行動如何で世界の命運が変わる。
今作はヒーローものに対する皮肉によって構成された「アンチヒーロー」ものと言えますが、物語の作り方としては同時に「セカイ系」を皮肉ったものでもあり、つまり「アンチセカイ系」とも言えるのではないかと思います。
そう、だから、結末としてはこれでいいんです。
広げた風呂敷をきれいにたたむ必要はなく、ばら撒くだけばら撒いた伏線はことごとく回収せず、ただ単に少年と少女の関係性のみに焦点をあて、「きみとぼく」の関係性が閉じるとともに物語も幕を閉じる。
人によっては丸投げだとか中途半端だとか批判したくもなるんでしょうが、僕にしてみればこれ以上はないというくらいにきれいな終わり方だったと思います。


今月末には続編となる『悲痛伝』が出版されます。
ひさしぶりにわくわくとした気分で西尾維新の新刊を待っています。
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