長野まゆみ / 河出書房新社

日付変更線を超えて… …ぼくたちは出会う
長野まゆみ版「浦島太郎」。
物語は三部構成で、実際的なつながりはないものの、その周囲に確かに存在する“ふしぎ”でつながっている。
現実のそこかしこに口を開けて待っている歪みに囚われる登場人物達。淡々とつづられるその文体と相まって、それはひどく幻惑的に映ります。
そして、長野まゆみ独特の文字遣い。
漢字を美しいと感じるのは、この人の作品くらいです。きれいな文章。漢字の持つ魅力をいっぱいに遣い切っています。
久しぶりに上質の幻想奇譚でした。