有川浩 / メディアワークス

春、寧日。
天気快晴なれど、波の下には不穏があった。
横須賀に巨大甲殻類来襲。
食われる市民を救助するため機動隊が横須賀を駆ける。
孤立した潜水艦『きりしお』に逃げ込んだ少年少女の運命は!?
海の底から来た『奴ら』から、横須賀を守れるのか──!?
前作『空の中』と比べると、こちらの方が格段に良い。
日本という国のあり方を問う姿勢がはっきりしていて、読みやすいのです。
有事の際、一体いかなる手順を踏めば自衛隊が出張ってこれるのか。軍隊を持たない国、という極めて特殊な国家でありながら、そのことをまったく意識していない稀有な国民性。なにかあったら死ぬよ? いやマジでマジで。みたいな作品でした。
キャラも良かった。立ち位置がはっきりしていて、きっちり役割を果たす簡潔さ。
しかもそれなりにツボを押さえている。
「恥をかけと命令しておいて、俺が恥をかかないわけにはいかないだろう」
思わずにやりとしてしまいますね。
それと同時に、少年少女の成長譚でもあるわけです。
正確には、少年少女+青年自衛官なのですが。
前回もそうでしたが、今回も基本はボーイ・ミーツ・ガール。や、ガール・ミーツ・ボーイ? まぁ、そう、ボーイ・ミーツ・ガールの変種を書くのが上手い人です。
「私のことは忘れてください」
この台詞が出てきたときは、「お、いいね切ないね、こういうビターエンドもたまにはいいよ」と思ったのですが、ラスト数ページで玉砕。
ああ……どこがビター。めっちゃスイート。読みが甘くてごめん。誰に謝ってるのか分からないけど、とりあえずごめん。見くびってごめん。
そうだね、笑顔で終わるっつーのは、気持ちがいいね!