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上橋菜穂子 / 偕成社
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タンダと共に草市を訪れたバルサは、人買いに連れられた兄妹チキサとアスラに出会う。アスラは美しい少女であったが、全身に<災い>の気配をただよわせていた。事情のわからぬまま、バルサはこの少女を助けるのだが…。

「守り人」シリーズ初の前後編。
二冊使って紡がれるだけあって、描写が豊富です。ある程度の世界観はこれまでのシリーズの中で形成されているとはいえ、舞台となる国が違えばそれも通用しない。
充分な長さに支えられ、今作ではロタという国の長い長い歴史と、そこに生きる人々の歪められ撓められた様々な思いを下地に、物語は進行します。

人買い、虐げられる人々、後の災いの源となるからという理由で殺される少女、こうした材料を並べ、そこに少女を助ける力と知恵を持った主人公が颯爽と現れる。
ここで思考停止し活劇へと移行していくのが、分かりやすい勧善懲悪もの。
しかし、今作ではきちんと葛藤を持たせている。
バルサがアスラを助けるのは、はっきりとした事情はなにも分からないけれど、ただ、単純に捨て置けないからという理由。
そんな感情的な中途半端な理由で、行動して良いものか?
目の前で殺されようとする少女を見殺しにすることが正しいことだとは決して言えませんが、では、助けることは必ず正しいのか。
一度手を貸してしまったら、もうその手を振りほどくことはできない。
ここは凌いだから、じゃあ後は好きにおやり、ということは許されないのだ、という覚悟が要るんです。
自分の行動につきまとい、決して離れることのない覚悟と責任。
それを、神と人と国とを民族的な視点で絡めて描きます。

なにが正しいのか、ということではなく、これが正しいのだ、と貫ける意思。そしてそれが間違いだったと分かったときに、それを認め正す意思。
そういうものの清冽さが、ここにはあります。
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