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上橋菜穂子 / 偕成社
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新ヨゴ皇国の皇太子チャグムがシュガとともに向かったのは、ヤルターシ海のサンガル王国だった。新王の即位の儀に招かれたのだ。ところが、めでたいはずのお祝いの席で、新王は傷つけられ、チャグムたちははからずも呪詛と陰謀の中に身を置くこととなる。


「守り人」シリーズ外伝、今回はバルサは出てきません。
主人公はチャグムとなります。

『夢の守り人』にも成長したチャグムは出てきましたが、今回はそのときとは比べものにならぬほどしっかりとチャグムの姿が見て取れます(なんといっても主役ですからね)。
なんとまぁ、立派に成長したことか!
陰謀の匂いをかぎ取り、行動を起こそうとするチャグムをシュガが制止します。そしてそれを聞いて無謀な行動を自粛するチャグム。しかし、彼はその後にこう言うのです。

「シュガ。ひとつだけ、約束してほしいことがある。
 これからも、お前がなにかの陰謀に気づいたとき、わたしをまもるためにその真相をかくすようなことはけっしてせぬと約束してくれ。……陰謀の存在を知りながら、だれかを見殺しにするようなことを、けっして、わたしにさせるな。」

ああ、バルサが、タンダがトロガイが、きちんとこの年若い皇子の中には生きているのだな、と胸が熱くなりました。バルサたちが教えてくれたことを失わずにいること。それを抱えたまま皇子として生きることは非常に難しい。一国を担う皇子として、きちんと成長したチャグムの姿をそれまでに見ているだけに、感慨はひとしおでした。

こうしたチャグムとは対照的な考え方をするのが、サンガル王家の人々。
ていうか、そっちの方が王家的には当たり前で、チャグムが異例すぎるわけですが。
王であるということは、数学をするようなものです。
人が人であり、思いが思いである前に、すべては最大多数の最大幸福のための駒です。
それとチャグムを並び立たせることで、チャグムの苦悩には陰影ができますし、どちらが正しいのだということも言明できなくなる。
混沌とする中で、それでも自分に正直であろうとするチャグムが愛おしく見えてきます。


ラスト、チャグムがシュガに向かっていった一言が、ずん、と心の深いところに響きます。

「……そなたの才能を、まつりごとだけにすりへらすな。驚きをもって異界をみるまなざしを、けっしてくもらせないでくれ。」

サグとナユグの接する世界。ナユグという異界は、サグという現界と常にひとつなのですよ。
現実の物事に心を摩耗させ、世界を世界として捉える感性を失うな。
これは、チャグムがシュガに、という形を借りて放たれた、作者のメッセージそのものだと思いました。
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