森博嗣 / 講談社

航空ショーでアクロバット演技中のパイロットが撃たれ、死んだ。航空機は二人乗り。パイロットが座っていたのは後部座席。しかし、撃たれたのは背中から。犯人は一緒に登場していた女性記者なのか? 衆人環視の中、成立した空中の完全密室。
航空機が出てくるだけあって、地の文でも会話文でもちんぷんかんぷんな部分がいっぱいでした。一応紅子さんがへっ君に説明をするのですが、なにせ、ほら、説明を聞くのがへっ君ですから。賢い彼のこと、最小の説明で最大の理解を得るんですね。というわけで、説明を読んでさらに混乱するという。練無や紫子と大いに共感してしまうのでした。
練無の過去や恋がちらっと垣間見えたり、紫子の気持ちが垣間見えたりとなかなかいい感じでした。
しかし、今巻では保呂草さんがほぼ別行動をとっていたため、紅子×保呂草のやりとり(駆け引き、牽制と言い換えても可)が少なかったような気がします。残念。各務亜樹良とのやりとりが多少刺激的ではあったかな、とも思いますが、所詮共犯者ですからね。いまいち火花が足りないというか、緊張感が希薄というか。
このシリーズは、紅子さんと保呂草さんの絶妙なやりとりが最大の魅力だと思うので。