荻原規子 / 角川書店
泉水子は<戦国学園祭>で能力を顕現させた。
影の生徒会長・村上穂高は、世界遺産候補となる学園トップを泉水子と判定するが、陰陽師を代表する高柳が、異議をとなえる。
そしてIUCN(国際自然保護連合)は、人間を救済する人間の世界遺産を見つけ出すため、泉水子に働きかけ始めた!?
泉水子と深行は、だれも思いつかない道のりへ踏みだす。
姫神による人類滅亡の未来を救うことはできるのか――。
前回の戦国学園祭で決着はついたかと思ったんですが。そこはさすがの高柳一条。
負けや失敗を認めず、すべてを自分の都合の良いように解釈し、決して折れない天狗鼻。ここまでくると、呆れるを通り越して天晴れです。実際身近にいたら辟易するだろうけど、競争社会の中で生き抜くためにはこうした図々しさを持ってないといけないんだろうぁ。
特異な存在だと知られてしまった泉水子が、望みどおりの「平凡な学生生活」を手に入れるためには、隠れることをやめて逆にトップに立つしかない。その上で、自分の望みどおりになる環境を整えるしかない。
泉水子にとっては青天の霹靂だったでしょうが、読んでいるこちらとしても目から鱗でした。なるほどなぁ。荻原作品のヒロインらしからぬ引っ込み思案の泉水子でしたが、最後にその片鱗を見せてくれました。うん、やっぱこうでなくっちゃ。
それにしても、泉水子と高柳一条の対決は、神霊や自然に対する荻原さんの考え方がはっきりと見えておもしろかったです。
結局のところ、高柳一条ひいては陰陽師の行っていることは理を以て神霊や自然を制御し、支配下に置くことで使役する、という方法でした。
それに対し、泉水子が行ったのは、場の隅々にまで意識を通わせ、その場を整える、という方法。
対決の結果から見るに、荻原さんが後者に重きを置いていることは明らかです。まぁ、デビュー作が『古事記』を下敷きにした作品だったんだから当然といえば当然なんですけど。
自然は制御し支配するものではなく、敬い恐れ自らもその一部であることを自覚し時に手を添えるもの。
良いメッセージだと思います。
僕がいますんなりとこう思えるのは、元々そうした思いを持っていたからなのか、それとも荻原作品にのめりこんだからか。もはや昔のことすぎて渾然一体とし判別はできませんが、物語の力を素直に信じられるのはこうした瞬間ですね。
RDGも一区切り、次はどんなお話を見せてくれるんだろうなぁ。
フィリエルのような元気でおせっかいなヒロインがまた見たいな。
ルンフィリのような幼馴染を現代で。無理かな。