作・演出:平田オリザ / 桜美林大学+青年団

202×年、架空の青年海外協力隊第四訓練所。
この年、日本政府の財政は破綻寸前となり、すべての海外援助活動の停止が決定される。
最後の派遣隊員となる青年たちの訓練所生活の、その寂しく切ない悲喜劇を通して、人間が人間を助けることの可能性と本質を探る青春群像劇。
創作って、絵空事じゃないですか。
小説にしろ漫画にしろドラマにしろ映画にしろ、仕組まれたシチュエーションで配置されたキャラクターがいかに立ち回るか、を見せて想像させることで他者を魅せて物語を創造するんですよ。
んで、演劇・舞台というのはそれがもっとも顕著なジャンルだと思います。その物語のためだけに特化されたシチュエーション。見事なまでにそのシチュエーションでしか動けないキャラクター。観客の想像力に依る部分が大きいために、結局物事をデフォルメして強調して、作り手の思うように観客を誘導するわけです。
この「もう風も吹かない」は、日常でした。
確かに舞台は海外青年協力隊の訓練所、という、どちらかというと非日常なものですが、舞台の上で繰り広げられるのは、その訓練所での当たり前の風景でしかありませんでした。
僕はこういうのが大好きです。
っていうかですね、こういう何気ない日常を描けるのがうらやましいです。
劇的なドラマは日常たり得ませんが、ありふれた日常はすべて煌めくようなドラマの凝縮です。
そして、なにより青臭かった。
人が人を助けるとはどういうことか。自分は有益か否か。
そんな疑問が展開されます。
僕はもしそんな疑問をふっかけられたら、完膚無きまでに叩き潰せるほどかわいげが無くなってしまいました。だからこそ、もうむんむんと青臭いものを見てしまうと、かわいくてうれしくてしようがなくなってしまうくらい好きなんです。
今年はたった四本しか舞台を見ていないのですが、この「もう風も吹かない」が文句なしでナンバーワンでした。
ちなみに、数ある登場人物の中で、僕は賄いのお姉ちゃんが一番好きでした。大胆というか無謀というか、手札を公開しながらポーカーをするような人。そんで勝っちゃう。
「私のこと助けてくださいよ」が、見事に心に突き刺さります。