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連ドラ、『リッチマン、プアウーマン』のスペシャル版。
このドラマは王道を踏襲しつつ、いい感じに現代風のアレンジを加えた良作でした。
スペシャル版ということでそれをどう料理するのか楽しみ半分、しかしCMを見る限りでは陳腐になってしまっている可能性半分という感じで、いろんな意味でわくわくどきどきしながら見ました。

やられた……!
これはいい。
連ドラでのエピソードや心情の動きを台無しにせず、それでいてさらに各キャラを掘り下げつつも破綻していない。
うまい。

導入部、地球の裏側で離れ離れになった日向と真琴。そのふたりが自分の仕事の合間を縫ってわずかな時間を共有するシーン。も、これ、卑怯。
「彼のいる場所がわたしの目的地です」

GPS片手にタクシー運転手に真琴が言うセリフ。これが、このドラマのすべてを物語っていると思います。
物語の後半、ふたりは決定的な別離を経験します。それは、ふたりの立ち位置――単純に言えば経営者と労働者、仕事を作る側とする側という立場、つまり立つ場所の差が原因なわけです。
もちろんこのセリフは、この時点ではただ単純に物理的な距離を表すセリフでしかありませんが、物語を追っていくと、このセリフの持つ意味の大きさ、そのテーマ性の強さにはっとさせられてしまいます。
早い話、この物語は日向と真琴、この二人が互いの居場所を自分の目的地だと認識するまでの過程なのですから。

まぁそれはともかく。
そうした決定的な点を差し引いても、このシーンはやはりすばらしい。
ほんのわずか、限られた時間でありならもどんどん画面右端に表示される「clip」数が増えることで簡潔に時間の経過と二人の時間の濃密さを表現している点もすばらしい。
それに、
「その顔は今朝も見た。その声はさっきも聞いた。大抵耳を遠ざけたくなるくらいうるさい。少しは離れていたいくらいだ。
……でも、黙っているお前の横顔を見るのは新鮮でいいな」

なんだこれ。
「今度は、時間止めておけるアプリ、作ってくださいね」

しかも満面の笑みだぜ。それでこんなセリフ吐かれてみろよ。
そりゃ、あの日向徹も何とも言えない表情するよ。するよね。したもん。うまいよー脚本もうまいけど、それをきちんと体現する石原さとみと小栗旬うますぎるよー。


いろいろ意見はあるでしょうが、私は、結婚式での二人の別れはすごく妥当だと思いました。ようやく落ち着く場所に落ち着いたな、と。
ドラマ最終話でのあのオチはいただけないなーと思っていただけに、本当に、ようやくしっくりきたと思いました。
恋愛を優先する日向徹という図がどうしても理解できなかったんですよね。
優先する、という言い方が変だとして、なんというのかな、おぼれる?
日向徹にとっての人間関係のMAXは、朝比奈さんだと思うんですよ。あの信頼関係。
あれがMAXで、それと同等の位置に立つことのできる人はいても、それを超えるのは違うと思うんですよねー。
異性とか同性とか関係なしに。
それこそ、ここで性別を持ち出すのは野暮の極みだろーと思います。
あの人にとって、大切なのは信頼関係だと思うんです。
日向徹の、というか、物語のネックの一つでもある、お母さんに捨てられた、という過去。
誰かを心底から信頼するということは、捨てられるかもしれないという不安を払拭するということでもあります。
自分がどれだけ信頼し好意を寄せていても、相手がそうと決めてしまえば捨てられてしまうんです。
だから、どうしようもなく誰かを信頼するということは、誰かに裏切られ捨てられても、自分が抱いた信頼と好意を決して失わないということなんです。
だから恋愛感情の好きとか嫌いとかで誰かを特別視するのは日向徹らしくないし、そんなこと、つまり男女関係だから特別だというのはものすごい違和感がありました。
「僕のパートナーだ」

と、言い切るあのシーンのかっこよさは、すべてこの点に依っていると思います。
互いが互いに寄せる絶大な信頼。
「パートナーとは同レベル」という朝比奈さんのセリフが言いえて妙ですね。
男と女だから。同等の位置にいなくても「特別」で当たり前、だなんて。陳腐だ。陳腐すぎる。

そうして考えると、別れを切り出したときの日向徹の「僕たちは戦友のようなものだ」というセリフはものすごくしっくりくるんですよ。
あのふたりの関係は、恋愛関係にすとんと落とし込めるようなものではなく、そうしたある種共犯者のような連帯感によって作られていると思うのです。もちろん、恋愛においてそうした連帯感が互いの絆を深めていくという点は否定できませんが。
夏井真琴はともかく、日向徹という人格は、そうした連帯感を恋愛関係に落とし込むことができる人格ではありませんから。
「僕は、お前の顔が見たかった。見れた。だからもういい。……行け」

このセリフがそうした人格を端的に表していると思います。

しかし。
しかし、ですよ。
ああ、これがこのドラマのすばらしいところです。

そうした人格である日向徹、その日向徹を、破綻させることなく変えてしまった。
どうしようもなく絶大な信頼関係。それにほんのわずか。たったひとふりのスパイス。それを振りかける余地を、日向徹は見つけてしまった。
それが、日向と真琴の関係を劇的に変えてしまうんです。
たった1カロリーの熱量で、世界は一変する。
ああ、いい。いいなぁ。胸がキュンキュンしますね。

そしてにくい演出。
ここであの最終回のラストシーンにつながるのね。ああ、も、これなら文句のつけようないわ。納得。
そしてその後のシーン。
ものすごく悲しいけれど、「The End」の文字がこれほど似合うラストシーンは滅多にないでしょう。

おつかれさまでした。
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