新津孝太 ／ 劇団ジョキャニーニャ
地方のアパートで一人暮らしする女と、とある事情から
一緒に住む事になった愉快な人達が巻き起こす日常テイストコメディ
女はイラストレーターを目指して日々奮闘中
住人達はそんな彼女が大好き
彼女のちょっとだけ見栄っ張りな性格が災いして、面倒な事も起こるけど
それでもとりあえず何とかなってる
だけど、そんな彼女もそろそろ恋人が欲しい
それをあれこれ邪魔する住人達が疎ましい
家主の女と三人の住人。そこに全然関係ない人たちも乱入してアパートの一室は狂乱の舞台へと変わっていく。
ジョキャは、金沢アマチュア演劇界でもっともおもしろい舞台を作る劇団だと思います。個人的に。
その昔は劇団BANG★BOO!SHOTとの2強だったんですが、いつの間にかバンブーが活動しなくなってしまっていたので、いま現在、自分の中ではトップ1だと思っています。
で。
そのジョキャの作品の内、僕が見た中で一番の作品が、この『窓辺の金魚、宇宙の辻さん。』でした。
観劇時、あまりにもおもしろすぎて好きすぎて、感動でぷるぷるしてしまうくらいに大好きな作品です。
で。
その脚本が公開されているので、最近個人的に流行の電子書籍化して読んでみました。
うん。やっぱりクソおもしれえ！！
あー、もっかい見たい。
再演、もしくは公演時の映像をDVD化してくれませんか。関係者の方。
さて。
以前テレビドラマの感想にも書きましたが、『めぞん一刻』が好きすぎる僕にとって、下宿ものは反則的な強さを発揮します。
他人が集まって一時的な共同体を作る、というのは非常にドラマ性が強く、作り方・維持の方法、過程・終わらせ方の組み合わせ次第で、どんなテーマにでも応じることができます。
ていうか、人と人が出会って仲良くなって一緒に暮らして別れていく、って、人生の縮図そのものですからね。そりゃ当然の話なわけですよ。
そして今作。
もう、これ、もろに一刻館じゃないですかー。
変人の隣人たち。プライバシーもなにもあったもんじゃない共同生活。でもなぜか和気藹々と酒盛りなんかしちゃったりして。
でも、ただの物真似じゃないんです。
この共同生活の作り方がうますぎる。
イラストレーターの女性と、その女性のストーカー（×３）。
金欠にあえぐ彼女は、身近でストーキングさせる代わりに、ストーカーから金銭的援助を要求する。ストーカーは健全なストーキング精神（？）に則り、あくまでも紳士的にストーキングライフを満喫する。
も、ね、突飛すぎる。
でもでも、決して現実味があるというわけじゃないんだけど、「なるほど！ その手があったか」と思わせる絶妙の設定だと思うんです。
それは、舞台という極端にデフォルメを施した世界だからこそできる表現。
人間を一から十まで表現しようとすると、当然2時間弱という尺じゃ到底足りなくて、観客に簡潔にキャラクタを把握させ、物語を進めるには、キャラクタの特徴をデフォルメして誇張することが必須です。
今回は、ストーカーの「対象を監視することで満足を得る人」という属性のみをデフォルメし、その他の部分を捨て去っています。
だから、現実にはありえねえよ、と思いながらも、こうした設定もありかも、と思ってしまう。思わされてしまう。
こうして言葉にしようとすると僕の力不足のせいもあり、上手く伝わらないと思いますが。実際に見て、とうのは無理なので、せめて脚本を読んでみてほしいなぁ。
とにかくおもしろいので。
あと、この作品は終わり方がとってもさわやかですてき。
作品全体は基本的にコメディなんですが、最後のシーンがタイトルと「ストーカー」というワードと絡み合ってきれいにオチる。
本当なら全然さわやかじゃないんだけど。「えっ、ストーカー怖い」ってなっても全然おかしくないんだけど。
なぜかさわやかな青春もののように見えてしまう。
『めぞん一刻』とは正反対だけれど、やっぱ下宿ものは誰かが去ってナンボです。
一時的なものだからこそ、そこに見えるものがありますよ。
