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監督:スザンネ・ビア
2004年 / デンマーク
aruai.jpg
美しい妻サラと2人の娘を持つ国連軍のエリート兵士ミカエルは、良き夫、良き父として幸せな日々を送っていた。しかし、戦渦のアフガニスタンへ赴いた彼は、敵の捕虜となってしまう。一方、サラの元にはミカエルの訃報が届き……。


『アフター・ウェディング』も良かったですが、こちらも大変すばらしい。
なんつー物語。

これは、喪失と再生の物語です。
ミカエルが戦死してしまったとの訃報から、遺された家族が如何に立ち直るのか。
嘆いたところで悲しみは埋まらない。
しかし、家族のふれあいがそれを和らげてくれる。
劇的な喪失の後に訪れる、穏やかな痛みをともなった再生。

また、それと重なるようにして描かれる、職業軍人であるミカエルが戦地で直面した現実。そこでは一方的な喪失が展開されます。
そこでミカエルが失ってしまうものの大きさといったら! 生命の取捨選択は、重すぎます。

後に帰還し、再び幸せな現実に戻ったかと思われたミカエル。
しかし、そんなわけはないのです。
ミカエルは、戦地で取り返しのつかない喪失を経験してしまっています。それを埋める手だてはまったくなく、遺された家族が緩やかに行った再生を踏みにじることで、その無意味さ、無慈悲さ、無力さをスクリーンにぶちまけます。
もう元には戻れない、なぜなら俺は失ってしまった。
荒れ狂うミカエルは、全身でそう叫んでいました。


しかし、ミカエルが喚き立てるものは、ミカエルの勝手な理屈でしかありません。


確かにミカエルの抱えたものは深い、深い深い闇です。もう以前のように笑える日はこないのかもしれません。
ミカエルはそれを独りで抱え込みます。だから刻み込まれた傷はいつまでも治らず、放置されることによって更なる膿をまき散らすことになるのです。
それを、妻のサラは共有することはできないのか、と問いかけます。ミカエルは当然そんなことはできない、と突っぱねます。すると、サラは話してくれないのならもう会わない、と最後通告を突きつけます。
深い、深い絶望の淵から差しのばされた最後の手。
これを逃せば、もうミカエルは絶望に堕ちて飲まれてしまうしかありません。
苦悩の末、ミカエルはその手を取ることを選択します。
そして、そこで物語は終わります。


一旦はミカエルが粉々に破壊してしまった緩やかな再生。
しかし、結局、ミカエルを救えるのはその緩やかな再生だけだったのです。
つまり、家族の絆。
ある愛の風景、という邦題はまさに見事なネーミングだったと思います。


ある愛の風景
http://aruai.com/
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