監督:高橋泉
2004年/日本

崩壊へのかすかな予兆はあった。パニック障害になり社会生活がままならなくなってしまった北川。やがて彼はあるセミナーに通い出し、新興宗教にはまっていく。そんな彼との日常を取り戻そうと、ふたりの生活を必死で堰き止めようとする志津。彼女は日常に北川を呼び戻そうとすることで、北川は非日常の世界に志津を引き込もうとすることで関係を修復しようとする。しかしそれは互いが“他人”であるということにおいて、脆くも崩れていくのだった……。
パニック障害と新興宗教。どんどん泥沼にはまりこんでいく男と、それを必死で引き留めようとする女。二人とも、もうあの幸せな時間に戻れないことは分かり切っているのに、目を背け続ける。
驚くほど静かな視点で、あるカップルが崩壊する様を描いた秀作。
作品全体に満ちあふれる閉塞感が実に秀逸で、息苦しくなるほどでした。
あんなに痛ましい笑いを見たのはひさしぶりでした。
ていうか、フィクションでははじめて。
人間、本当にどうしようもなくなると笑うしかできなくなりますよね。
苦しい、痛い、せつない。そんなのを全部通り抜けた先には諦めしか残らなくて、そうすると自然に笑いが口をついて出る。乾ききったその笑い声には、絶望が塗り込められているのです。身の毛のよだつような声音でした。
あの、トイレの窓越しに二人が交わす会話。
真剣に胸がきりきりと痛みました。
「じゃあ、病気の半分もらってくれよ」
こらえきれなくてあふれてしまいました。
きれいごとじゃなくて、これが真実なのだなぁ。人はひとりで生まれて、ひとりで死んでいくのだなぁ。と、改めて思いました。
最初と最後、あの演出は見事でした。
も、志津の臨界点が画面からあふれていました。いたすぎるよ。
涙は正直出ませんでしたが、精神的に追いつめられすぎて胃がきりきりと痛みました。頭痛と吐き気が襲ってきました。
すっごい作品ですよ、これ。
絶対見た方が良いです。
なんでこんな作品が全国で大々的に上映されないんだ。
分かりやすくて安っぽいエンターテイメントが欲しいんならテレビ見てろよ。
どんな良い作品でも、触れる機会を与えられなければ意味がないんだよ?
嗚呼。
ある朝スウプは
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