監督:大友啓史

『るろうに剣心』だと思わなければ、アクションシーンがすごいだけのC級アクション映画。
『るろうに剣心』だと思うと、駄作以外のなにものでもない。
という作品でした。
まず、主役二人のキャストに大いなる不安を抱いていましたが、佐藤健は存外良かったです。むしろ、実写剣心はこの人意外にはできないんじゃないか、と思わせるくらいには。
ただ、武井咲は懸念のとおりでした。残念すぎる……。
それでも、ヒロインのくせに出番が少なく、そのおかげでなんとかなったんじゃないかと思いました。
そしてアクションシーン。
これは、素直に舌を巻きました。見ごたえはたっぷりありますよ。途中何箇所か「おいおい」って言いたくなるThe・ワイヤーがありましたが、逆に言えばその何箇所しかワイヤーが気にならないんだから、役者さんがんばってるなぁ、と感心してしまいます。
しかし。
ストーリーと演出がひどい。
2時間20分あって、山場らしい山場がないんですよ。
いや、ここ山場にしたいんだろうな、というところはあるんですが、見ていてまったく盛り上がらない。ストーリーが雑すぎてキャラの思いがちぐはぐだし、もっと大袈裟でいいから、しっかり演出しろよ、と言いたい。
ていうかそもそも、キャラクターとエピソードが多すぎる。
使い捨てるくらいなら、斎藤や弥彦出さなくてもいいのに。
原作のエピソードを切り貼りして2時間強に収めるのは大変だと思うんだけど、あれもこれもとエピソードを詰め込みすぎ。欲張るものだから結局全部が薄っぺらく、「なんなんだろう、これは」と思わずにいられない。
というか、そもそものそもそもとして、『るろうに剣心』をアクション映画にしてしまう時点でずれている。
原作の副題が「明治剣客浪漫譚」であることをきちんと考えてほしかった。
「剣心←→抜刀斎」、「不殺」というのが大きなテーマである以上、アクションは二の次で、きちんとキャラクターの心情とその動きを描いたドラマが第一義だろう、と思うんですが。
ラスボスを刃衛にするということは、監督だって「剣心←→抜刀斎」、「不殺」がこの映画の一番重要なテーマだと考えているということだろうに。アクションを目玉にするんなら、ラスボスはガトリングガンで、もっとド派手にやりあえばよかった。
2時間の映画にするんなら、原作の第1話だけで十分だったと思います。
それこそ時代劇の要領で。
大体、『るろうに剣心』は伝統的な時代劇のスタイルを踏襲したマンガでした。
市井の人々の間で困りごとがあり、そこに権力や暴力が絡み、手も足も出なくなったところで「人斬り抜刀斎(の異名)」もしくは「最強の流浪人・緋村剣心」が現れ大団円、という、まさに「水戸黄門スタイル」。
民放から時代劇が消えて久しいこのご時勢、大ヒット少年マンガを原作とし、人気若手俳優を主役に迎え、おざなりでないアクションシーンをひっさげながらも、往年の時代劇を彷彿とさせる新しい時代劇。
そんなのを期待していたんですが。
ただのC級アクション映画でしかありませんでした。
残念。