監督:エレオノール・フォーシェ
2004年/フランス

まだ17歳のクレールは妊娠5ヶ月。誰にも相談できない彼女は“匿名出産”で子供を産む決意をする。刺繍が大好きで、独特の才能を発揮していたクレールは、妊娠を隠すために親友の勧めもあってオートクチュールの刺繍職人メリキアン夫人のアトリエで働くことになった。
一人息子を事故で失って以来世捨て人のような生活を送っていたメリキアン夫人と、これからはからずも出産という未知の世界と向き合わざるを得ないクレール。不器用な二人は刺繍を通して少しずつ心の絆を育ててゆくのだった。
フランス映画らしいまったりとした作品でした。
しかし、その映像のうつくしさは特筆ものです。まるで絵画のような雰囲気。作中に登場する刺繍作品の繊細なうつくしさはもとより、主演のローラ・ネマルクの力強いうつくしさが競い合うようでした。
匿名出産というのは、「産みの親が子供の出生を届け出ず親権を放棄するフランスの合法出産制度」だそうです。無闇な堕胎を行わないように、という施策なのでしょう。
子供は産むけれど、育てない。
わずか17歳の少女には、他に取るべき術が見つからないのです。
周囲の誰にも妊娠していることを気づかれなければ、無かったことにしてしまえる。
そのためにクレールはスーパーの仕事を辞め、もともと好きだった刺繍で生計を立てようと目論むわけです。
はじめは後ろ向きだった。
ところが、刺繍と、そしてメリキアン夫人との日々が、クレールに強さを与えてくれます。
後ろ向きの、逃げの手段としての刺繍が、クレールを救うのです。
生命をはぐくみ、産み出すというのは一体どういう心地なんでしょう。
想像もつきません。
クレールの刺繍
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