監督:賈樟柯
2004年/中国・日本・フランス

北京郊外にあるアミューズメントパーク「世界公園」。イミテーションの小さな世界で、ひたむきに生きるダンサー・タオ。
日々変わってゆく中国・北京の片隅で、愛を知り、涙を流す。
踊っていても、立ち止まっても、それでも世界は回りつづける──。
舞台は北京郊外にあるアミューズメントパーク、「世界公園」。エッフェル塔やピラミッド、タージ・マハールに五重塔といった世界40ヶ国109ヶ所のモニュメントが、46万平方メートルの広大な敷地に10分の1に縮小、再現されていて、謳い文句は「北京を出ないで世界を回ろう」。
世界公園の広大さや華やかさが強調されればされるほど、この謳い文句がわびしく響くように感じました。そして、それこそがこの作品の描くテーマなのだと思います。
艶やかな衣装、華やかなステージで職場では同僚から姐さんと慕われ、プライベートではタイシェンという恋人がいる。そんなタオを見ていると、切なくてたまらなくなります。
言うまでもなく、光があれば影ができます。世界公園という光があれば、その裏には影があるのです。憧れ、不安、嫉妬、失望、そうしたものに振り回され、しかし、いったんステージに上がればそれらを振りほどいて笑顔を振りまく。
日々を懸命に、そしてひたむきに生きること。
それでも、必ずしも報われるとは限らないのだということ。
決してやさしくないラストでしたが、ハッピーエンドでもアンハッピーエンドでもなんだか納得できなかっただろうし、あの「行き詰まるだけ行き詰まってみて、ようよう振り向くことができました」という終わり方は、ある意味そっとさしのべられた救いの一手であったのだと思います。
世界
http://www.bitters.co.jp/sekai/