作・演出:平田知大 / 劇団羅針盤

月に行きたい。そんな夢を描いた一冊の本がありました。
ジュール=ヴェルヌ作 『月世界旅行』
でっかい大砲の砲弾に乗って月まで行こう!
びっくりです。いくらなんでも滅茶苦茶です。
でも… ほんのわずかながら、この本を本気にした人々がいました。
このお芝居にそびえる、でっかいでっかい色鉛筆。
よく見れば、その色鉛筆には噴射ノズルがついています。
よくよく見れば、人が乗り込む操縦席も、ついています。
月ロケット。
この物語は、月にウサギを見た人々のお話。
彼方の月を、目指して。
劇団羅針盤の第六回公演。
この劇団はいつもいつもSF……というにはちょっと物足りない、そう、あえて表現するなら、空想科学の科学抜き風味的なお話を見せてくれます。
毎回(といっても、今回で三回目ですが)思うのですが、羅針盤はほんとおもしろいです。なんといっても役者さんがいいんですよ。それに加えて、本がエンターテインメント性を持ち合わせている。どことなく少年マンガっぽい感じ、というと分かりやすいかな。
ただ……ぽんぽんぽんと提示したものを回収し切れてない……。
「あーおもしろかった」と見終わった後に、「で、あれはなんだったんだろ」「別に要らないんじゃない?」といった感想が出てきます。
お話を膨らませて奥行きを持たせたいのかなぁ、とちょっと感じますが、それよりも、絞るだけ絞って、スマートに見せてくれた方がいいんじゃないかな、と思います。
「イグザクト」、「暁のハカナ」と過去二作では、クライマックスでのキャラクタの“演説”がかなりげんなり気味でしたが、今回の作品はそこまでげんなりしませんでした。
初回公演の再演ということなので、脚本自体は最も古いはず。ということは、かなりの修正が加わっているのか、回を重ねる毎にクドさが増していっているのか。
前者だと大歓迎、後者だと苦笑い。
なんと次回公演が六月にあるというので(三ヶ月に一本!)、その本に注目です。
どきどき。