プロレスに毛ほどの興味も無いので、当然力道山のことなんて全然知りません。名前と空手チョップくらいが関の山でした。
……ああ、力道山ってこんな人だったのか。
もちろんこの作品は映画なのであって、ドキュメンタリーでないことは重々承知しています。でも、彼を取り巻く環境と時代背景には間違いがないだろうし、それならやはり、この映画を見て感じたことに間違いはないのだろうと思います。
ヒーロー・力道山といえど、彼もひとりの人間でした。
しかも、短気で怒りっぽく、自意識過剰の自己顕示欲の固まり。早い話がただの子供。身近にいたら真っ先に嫌いになるタイプです。
ま、それも分からなくもないですよ。あれだけ虐げられれば、ちょっとくらい歪みが出ても仕方ないとは思います。
いやなタイプの人間ではありますが、それでも、彼が日本初プロレスのリングで快勝するシーンでは鳥肌が立ちました。
それは力道山というキャラクタの力強さのせいでもありますが、それ以上に彼を取り巻く観衆の沸き立ち方に依ります。力道山は紛うことなくヒーローだったのです。
しかし、こうした男の生き様を描いたような作品を見ると、僕はいつもその男を陰日向で支える女性の方にこそ目がいってしまいます。
ま、今回はちゃんとそこに視点を向けて、力道山の一代記であると同時に、力道山と綾のラブストーリーという側面を押し出していたので余計にそう思えたわけですが。
中谷美紀、すごい! いろっぽい!
若い時分の貧しいけど幸せです、って表情も良かったけど、力道山がヒーローとなればなるほど翳っていく表情の艶っぽいことといったら、もう。
力道山と女優が雑誌の写真撮影(?)に興じている華やかな声を聴きながら、台所でりんごを剥いてメイドさんに手渡すシーンが最高でした。あと、倒れた力道山に付き添って、手を握りながら「もうそんな嘘は言いません」「お願いです、あなた。負けてください」と言うシーンは、言わずもがなです。ぎりぎりと心臓が万力で潰されるような切なさでした。
あ、あと、この作品の終わり方がすごく好きです。
力道山
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