監督:小栗康平
2005年/日本

舞台は山に近い小さな町。高校生まちは、友だちと短い物語をつくりそれをリレーして遊ぶことを思いつく。唐突に紡がれた少女たちの物語は未来へと向かう夢。一方、町に暮らす大人たちにも過去の歩みが作り出した現実の物語がある。やがて交わらないはずの二つの物語が交差し、ファンタジックな世界が広がっていく。
タイトルの「埋もれ木」とは、埋没林のことです。埋没林というのは、その名の通り地中に埋まっている樹木のことで、長い時を経て、なおその姿を留めるものたちのことです。
物語は、主人公であるまちが仲間と物語を紡ぐところからスタートします。
しかし、この映画には、確固としたストーリーはありません。
まちたちがつくるお話と、大人たちの現実。それが交互にイメージとして映し出されるのです。起承転結もなく、ただ浮かんでは消えていくイメージ。
映像を見せていく。映像で魅せていく。
不思議な雰囲気です。
まちが浜に打ち上げられた鯨の話をする。
そのあと、近くの地方都市に出かけたまちは、トラックの荷台に大きく描かれた鯨と出会います。
去ろうとするトラックを追いかけて走るまち。
やっと追いついた先で、鯨は道ばたにできた水たまりの中に歪んだその姿を横たえていました。まるで、浜に打ち上げられたかのように。
夢と現実の交差。
このシーンが、とても分かりやすい上に、みずみずしさにあふれていてとても好きでした。
夢と現実が混ざり合ったカーニバル、そして、イメージとしての「さよなら」。
すごく綺麗な終わり方で、目を瞠りました。
非常に日本らしい作品だったと思います。
埋もれ木
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