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監督:ホルヘ・コイラ

街角にたたずむストリート・ミュージシャン、エドゥのギターでサンティアゴ・デ・コンポステラの朝が静かに始まる。前夜から呑み続け、そのまま朝食に突入する2人の男、おなかをすかして市場のチョリソを盗むマケドニアの青年、兄にゲイであることを隠し通そうとする弟、現れない恋人のために、ひたすら料理を作り続ける脇役俳優、沈黙の中で質素な食事をする老夫婦…。
エドゥは歌う。「すべて失敗、何もうまく行かない」
そこに、昔、愛した女性から突然、昼食の誘いが入り…。
誰かの朝食で始まった物語が、誰かの昼食で思いがけない展開をみせ、誰かの夕食へとつながっていく。何気ない1日3食、それは人生の味を変えるチャンス。


タイトルが秀逸。
いったいどんなドラマが繰り広げられるのか……想像がいくらでも膨らみます。
それに、食事をメインテーマに据える、というのはなかなか魅力的です。
特別な非日常よりも、日々当たり前のように行われる日常の方がよりドラマ的だと思うからです。
ひとつの街を舞台に、朝食、昼食、夕食を作り、食卓を囲む人々の姿を描く。これがドラマでなくてなにがドラマなの、ってくらい直球ど真ん中の群像劇の予感がします。

そしてこの映画を見てみようと思ったもうひとつの理由が、この映画の舞台がガリシアのサンティアゴ・デ・コンポステラであるということ。
昔『サン・ジャックへの道』という映画でこの地がカトリックの三大巡礼地のひとつであると知って以来、なんとはなしに気になっていたのでした。
ヨーロッパやキリスト教に詳しくない身からしてみると、キリスト教の聖地が北スペインにあるというのもなんだか不思議な感じがするし、キリスト教徒の巡礼者が訪れる街、というのも、なんとなくイメージがわきません。まさか四国八十八箇所巡りみたいな人々がいるわけでもあるまいし、日本の寺社仏閣のように観光客があふれ土産物屋が林立しているわけでもあるまいし(まぁ前述の『サン・ジャック~』で巡礼者や街の姿はある程度描かれていましたが)。
それに以前みんぱくで行われていた「聖地巡礼展」を見て以来、「聖地」というものにも少し興味がわいていましたし。

そしてこの映画で描かれた街の姿は。
ごくごく普通のどこにでもある街でした。
なんだ「聖地」という響きに期待しすぎたかなー、と思いつつ、でも、日本のいかにもな観光地っぽくなくてそれはそれでいいのかなーとか思いながら見ていました。


映画は、1部 朝食・2部 昼食・3部 夕食の三部構成で、いくつかの食卓をザッピングして見せていくような作りとなっていました。
最後まで見終えてみればあるひとつなぎのストーリーがいくつかあり、あとはそれが絡んだり絡まなかったりしながらその断片を見せられていたのだなぁ、ということがわかるのですが、はじめはその視点の入れ替わりが激しく、ストーリーがつかめないままどんどんいろんな情報が提示されていくので少し戸惑いました。
せめて朝食はもうちょっと腰を落ち着けて各ストーリーの導入部を見せてくれた方がわかりやすかったかな、と感じました。
しかし、細切れにさまざまな場面を提示していくことで、のちのちストーリーが頭の中でつながっていくときの興奮がうまれるわけで……。一概に悪いとも言い切れないのが憎いところです。

食事を作る・食事を摂るという行為自身にドラマ性を見、感情の機微や心情の変化をそこに託す、というやり方は、うるさくもなく押し付けがましくもなく、心地よい距離感を持ってスクリーンに物語を映し出してくれていました。
よしながふみの「きのうなに食べた?」を彷彿とさせる手法ですね。しかし「きのう~」が物語であると同時にレシピ集としても成立するのに対し、今作はあくまでも人間ドラマであり、フードシネマではありませんでした。


「食べることは生きること」とは誰の言葉だったか忘れましたが、まさにそういう事なんだと思います。大袈裟でもなんでもなく。


朝食、昼食、そして夕食
http://www.action-inc.co.jp/comidas/index.html
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