脚本・監督:高橋伴明
2004年/日本

独自の古代穴窯による信楽自然釉を成功させて陶芸界に新風を吹き込む女性陶芸家であり、また息子・賢一の発病をきっかけに骨髄バンク運動を始め、全国の白血病患者を勇気づけ続ける女性としても名高い神山清子。
実在するひとりの女性の、芸術家として、母として女として火のように生きる姿を描く、実話に基づく人間賛歌、命の賛歌。
愛を、焼き込む。
白血病、実話、というと、いかにもお涙頂戴的な印象がありますが、この作品は全くそうしたところがありませんでした。
旦那には女と逃げられる。女性だからという理由で窯元として認められない。苦しい生活の中、ようやく完成させた自然釉。突然の息子の発病。ドナーの不在、資金の不足。厳しい現実のさなかにあって、それでも彼女は、彼女たちは窯を炊き続けました。
作中の神山清子さんは、非常に強い女性として描かれています。白血病だと知らされ震える息子を松葉杖で打ち据え、「病気が怖いんか! 戦う前から逃げるんか!」と叱咤するほどに。
そんな彼女がたった一度だけ、ほんのわずかではありますが、病室から出て壁に向かって嗚咽を漏らすシーンがあります。
いちかばちかの骨髄移植の後、希望むなしく再発が確認され、衰弱していく息子。
時間にして数秒とないシーンでしたが、激しく揺さぶられました。
この作品のラストは、亡くなってしまった賢一くんの棺が家に帰ってくるところでした。皆が涙ぐみ、しずしずとお棺を家に向かえる中、彼女は弟子の女性に言います。
「窯の火、弱いんとちゃうか」
そして窯に薪を放り込む──で終わるのです。
生きるっていうのは、並大抵のことじゃないです。
それでも、ただ一本、腹ん中に芯が通ってれば強くなれる。
どんなことがあろうとも。
しかし、病気になって衰弱して病院のベッドの上で、というのは反則です。
個人的にどうしても思い出すことがあるので。
号泣した理由の三分の一くらいはこれでした。
最後にしょうもないことなんですが、これ、途中まで池脇千鶴が出てたんですよ。
かわいーですねぇ。あんなかわいーだなんて、いままで思いもしませんでした。
火火
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