監督:SABU
2005年/日本

“沖”と“浜”という2つの地域が存在する、とある干拓地。シュウジは、両親が自慢する出来のいい兄シュウイチのことが大好きな、“浜”に住む心優しい少年だった。そんな、シュウジを取り囲むように起こるさまざまな出来事と出会う人々──。やがて、大好きな兄シュウイチが挫折ののちに起こした放火事件から、家族は離散し、シュウジの運命の歯車が狂っていく…。
閉鎖的なムラ社会の“沖”と“浜”。その中に混入した異分子たちの物語。
最初から最後まで異分子であり続ける少女。
強者から弱者へと一夜にして転がり落ちる少年。
それを見守るのは、やはり社会からはじき出されたような大人たちです。
走って走って走り続けるしかないのです。生きるとはそういうことで、走ることを止めるというのは、緩慢な死を受け容れることと同義です。
そう、タイトルを見れば、「走る」ということがこの作品にとっていかに重要なものかが分かります。
いったんは走ることを止めたシュウジ。
足を奪われても走り続けたエリ。
一人では息切れしてしまうことは必至です。だからこそ、二人は手をつないだのです。
ラストのエリの姿は、この上もなく疾走している様に見えました。
涙は出なかったけれど、ざぁっと鳥肌が立って、手と足がふるえました。
韓英恵が最高。演技は上手いし、きれいだし(かわいい、というタイプではないと思う)。『誰も知らない』のときも激しく感じましたが、あの目。鋭くて、なにもかもを見透かしているのかと思えば、次の瞬間には、丸く緩やかで、なにも知らない無垢な少女のようでもある、あの目。あぁ、ぞくぞくします。
シュウジ役の子、NEWSの子だったんですね。あとで知ってびっくりしました。
この主役二人の脇を固める人たちが、また、いい。
特に中谷美紀。彼女、あんな凄みのある演技をするのですね。正直、きちんと見たのって、『ケイゾク』くらいしか記憶がありません。いまさらで怒られそうだけど、いい役者さんですね。
今年はこの作品を越える作品に出会えるだろうか。
完全に他を引き離す勢いの傑作でした。
疾走
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