監督:マルク・ローテムント
2005年/ドイツ

1943年、ヒステリックに全面戦争の勝利を叫ぶヒトラー独裁政権末期。「打倒ヒトラー!」の文字を町中の壁に書き、郵便やビラで国民に「自由」を呼びかけた“白バラ”のメンバーの紅一点、ゾフィー・ショル。
彼女は、2月18日、ミュンヘン大学構内で逮捕され、わずか5日後、人民法廷で「大逆罪」を宣告され即日処刑された。
通常49日かける裁判はなぜ1日で終わったのか? ナチスは何を恐れていたのか?
ああ、いいな、すごいな、と、冒頭から思いました。
ラジオから流れる音楽に耳を傾け、友達とベッドに寝転ぶ姿からこの映画は始まります。ラジオから流れる甘い恋の歌を口ずさみ、くすくすと笑いあう女学生。
ああ、いきなり日常ですよ!
どんな信念を持っていたとしても、どんな最期を遂げたのだとしても、彼女はただの21歳の大学生でしかなかったのですよ!
いきなりそれを突きつけられるのです。
逮捕されてからも、いきなり毅然と自分の行為を認めるのではなく、彼女は必死に自分は無実だと言い続けます。その見事さといったら、もう、ゲシュタポでさえ釈放を許してしまうほど。
しかし、その一歩手前で揺るぎない証拠が出てきてしまい、彼女は完全に退路を断たれてしまいます。
そして、罪を逃れられないと悟ってからのゾフィーは、尋問官の前では毅然としてあり続けます。しかし、彼女はただの女学生に過ぎないのです。押し寄せる恐怖に耐え、神に祈りを捧げる姿もまた、彼女の真実なのです。
秀逸なのは、ゾフィー・ショルを無条件に英雄にしなかった点。ただの大学生でしかなかった彼女を、きちんと大学生として貫いたという点。
そして、同時に良心を守り通す気丈な女性としての一面を無理なく同化させた点。
下世話な話になりますが、毅然としてナチスに立ち向かい、徹頭徹尾自分の信念のために殉死するようなキャラクタより、よっぽど感情移入が容易なのですね。
そしてなにより、ゾフィー役のユリア・イェンチの好演! なんでもドイツの若手実力派No.1だとか。確かにすごい上手かったです。
予告編でも見られますが、あの魂の底の底から絞り出したような叫び声。あそこで鳥肌が立ちました。
これは、かなりいい映画ですよ。
娯楽作品ではないし、見て「あーおもしろかった!」と言えるようなタイプでもないですが、機会があれば是非見ておくことをオススメします。
白バラの祈り
http://www.shirobaranoinori.com/