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監督:三木聡
2007年 / 日本

幼いころに両親に捨てられた孤独な大学8年生の竹村文哉は、いつの間にか84万円もの借金をこしらえ、返済の期限があと3日に迫っていた。しかし、その期限の前日、文哉は借金取りの福原から借金をチャラにする方法を提案される。それは、吉祥寺から霞か関まで歩く“東京散歩”に付き合うことだった。

三木聡と岩松了、ふせえり、松重豊の組み合わせは鉄板ですね。
おもしろくないとは言いませんが、もういいかげん飽きてきた。だって、どれ見ててもおんなじなんだもん。

と、まあ、小ネタとゆる〜い雰囲気満載でいつもの三木作品と似た感じなのですが、前作の『図鑑に載ってない虫』がほぼ全編小ネタの連続だったのに対し、今作は人間ドラマとして良くできていた。おもわずじーんときました。


これはいわゆるロードムービーですが、移動手段を散歩としたところがすごくいい。
車を使えば移動距離は稼げるし様々な景色を見せられるという長所があり、これがロードムービーの要のひとつとなっているとは思います。
でも、人間、移動速度と目に留まるものは反比例するわけですよ。速ければ速いほど、手にできるものは少なくなる。
その点、歩く速さというのは、普段なら気にも留めないもの、目にする端から忘れてしまうものを取りこぼすことのない速度です。
これは小ネタと抜群に相性がいい。
どんなものでも拾っていける。

また、見知らぬふたりの距離が縮まっていくという過程にも不自然なところがない。
これは主人公たちが長い時間と距離を共にするというロードムービーならではの連帯感ですが、散歩は車等よりも時間が濃密です。
なんといっても自らの肉体を使うわけですから。時間と距離に加え、疲労も共有するふたり。


散歩で細かく小ネタを拾っていき、ふたりの距離感を失くしてしまうことに成功した後に現れる、後半の、というかこの作品の人間ドラマのミソともいうべき擬似家族。

父:三浦友和
母:小泉今日子
息子:オダギリジョー

この時点で期待が高まる高まる、うっわ、こりゃいいぞとわくわくしていたらば。

娘:吉高由里子

思わず座席で震えた。ものっそい興奮した。
なになになに、この組み合わせ、これで擬似家族を演じるのかよ!
ポイントなのは、やはり本当の家族ではないというところ。
擬似家族。嘘の上にかろうじて成り立つ不安定な関係。
嘘だから安心できる。嘘だから甘えられる。嘘だから夢見つづけられる。
嘘の持つやさしさの力をまざまざと見せつけられます。


そしていつの間にかホームドラマになりかけていたところで、すとんとその舞台から落とされる。どんなに居心地が良かろうと虚構は虚構でしかなく、擬似家族は「解散」する必要もなくほどけてしまう。


切なさを強調するのでもなく、やるせなさを強調するのでもなく、涙涙の別れを強調するのでもなく、はじめから定められていたゴールへと到達することでこの物語は幕を閉じます。
なにかの答えを見つけたり、なにかを成し遂げたりするのではなく、この作品は長い旅を通じて原点回帰をするタイプだったのだ、とそのとき気付きます。

前触れもなく始まった旅は前触れもなく終わり、なにかが変わったようで結局なにも変わらず、ただ確かに旅をしたことだけが残る。
人生ってそんなもんかもしれませんね。


転々
http://tokyosanpo.jp/indexp.htm
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