「透光の樹」(著.高樹のぶ子)の映画です。
原作を読んだ後、千桐に秋吉久美子はなんだかイメージ違うなぁと思っていましたが、見終わってみるとそれほどの違和感はありませんでした。女優さんってすごいですね。
原作の前半では、郷と千桐の心理描写が細かく書かれており、恋愛感情を金と肉欲で誤魔化し言い訳を作りながら受け入れていく過程が露わとなります。それがまた、後半からラストへかけての大切な踏み台となるのですが、映画ではいまいちその前半の書き込みが足りなかったように感じました。
そのせいか、その背後に黒々と広がる感情のせめぎ合いやなれ合いが薄く、セックスシーンばかりが強調して見えてしまいました。いや、でも、まぁ、そのセックスシーンそのものが恋愛のプロセスなのだから、それは決して悪いことではないのだけれど、どうしてもビジュアル的な衝撃が強くてその背後にあるものが覆い隠されたような感じを受けるのです。
しかし、なんといっても、ラスト。
あのラスト。
本人にしか分かり得ない至福の中に閉ざされた千桐。
それを胡乱に見つめる娘。
あのシーンがあればこその作品です。原作も、映画も。
途中まで、「これじゃ泣かないかな」と思っていましたが、エンドロールでは涙を拭っていました。
透光の樹
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