監督:原田眞人
2007年 / 日本

戦後間もない東京で、美少女連続殺人事件が発生。引退した元女優・陽子の娘も姿を消し、探偵の榎木津が行方を追うことになる。一方、作家の関口と記者の敦子は、不幸をハコに閉じ込める教団に遭遇。榎木津、関口、敦子らはそれぞれの謎を胸に、京極堂の元へ集まってくる。
なんというひどさ!
京極堂シリーズのおもしろみをすべて抜き取り、単純な二時間ドラマに再構成。その際に少しばかりコメディタッチをスパイスに☆
みたいな。
ものすごい苦痛を強いられた二時間でした。
確かに、たった二時間の間にあの内容をみっしり詰め込むのは無理がありますよ。
それに、あの事件が起こるに至った動機は、実に映像化しにくいとも思います。
再構成もやむなし、多少のストーリー・キャラクタの焼き直しは必須だったと思います。
でも、あれはないだろ。
原作ファンにしてみれば、あそこを削ってこことここをつなげたのか、ふーん、へー、とストーリーを追うことはできたと思います。
でも原作未読の人だと話を追えなかったんじゃないかな。
まず、時間軸をばらばらにする意味と意図がわかんない。単純に話とキャラクタを分かりにくくぼやけさせているようにしか思えない。
そして木場修の意味のなさ! 一体なにしに出てきたの? ていうか、こいついらなくね? としか思えません。その程度なのに、クライマックスでは木場修をキーキャラであるかのように扱ってるんで混乱は増すばかり。
まぁそれでも、ストーリーが破綻してるわけではないので(おもしろくもくそもありませんが)、まだなんとか。あの長大な原作相手に格闘したんだな、という生ぬるい目で見られないこともありません。
が。
冒頭でも書きましたが、この作品は、京極堂シリーズのおもしろみをすっぱり抜き取ってありました。
圧倒的な知識と論理の洪水に飲まれ、一旦は自分を見失うけれど、その知識と論理の渦の中で再構成される──京極堂シリーズのおもしろみってここだと思うんですよ。
なのに、ない。
京極堂の長台詞がないんですよ。
御筥様のくだりで「あれー?」と思ったんですが、ここで時間を節約してきっと美馬坂研究所での憑物落しに当てるんだわ、と思ったんです。
それなのに……それなのに……。
憑物落しもしないのにタイトルに仰々と掲げられた「魍魎」。
空々しいにも程があります。
魍魎の匣
http://www.mouryou.jp/