監督:ニコラス・ローグ
1971年/イギリス

突然の事故でオーストラリアの原野に放り出された14歳の少女と6歳の弟。そして二人は放浪(=約一年間一人でオーストラリアの奥地を旅する成人試験の儀式)中のアボリジニの少年と出会う。束の間の疑似家族を形成した三人だったが、少年が少女に惹かれてゆくと……。
オーストラリアの自然に圧倒されました。
満ちあふれる生命に圧倒されました。
たまに、NHKスペシャル見てるのかと錯覚しました。いや、NHKスペシャルよりよっぽどすごかったですけど。自然の美しさと残酷さがとても素晴らしかったです。
ズバリこの映画のテーマは「通過儀礼(イニシエーション)」だと思うのですが、それにオーストラリアの圧倒的な自然の力と白人の傲慢さ、アボリジニの純粋さを絡み合わせたところが、この作品の非凡なところでした。
そして忘れてならないのがエロティシズム。
「性」の暗示、それに対して伸びやかな少年と抑圧された少女。
それがすごくいやらしくないエロティックさです。
そんな中、はじめて少女がそれを受け入れる場面があります。原野の真ん中、なみなみと水をたたえた池で彼女が泳ぎます。全裸で。そのシーンのめくるめく美しさとエロティシズム。それは文明社会からの解放でもあります。
しかし集落が近づくにつれ、少女の中に白人としての自覚が芽生えます。
まさに少女から大人へと、彼女は成長してしまいます。
そうした流れが分かるからこそ、見終わった後、彼女の沐浴シーンの煌めきが余計に強く大きく感じられるのです。
この作品はビデオ化されていないそうで、「幻の映画」と言われているそうです。
もったいないです。
もしこれを見ているあなたが少しでも映画に興味があり、オーストラリアの特異な生態系に興味があり、少年少女の危うく儚い輝きに興味ある人で、近くの劇場でこの作品が公開されるようなことがあれば、是非見てみると良いと思います。
WALKABOUT 美しき冒険旅行
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