よしながふみ ／ 太田出版
語れども語れども……
マンガ界の名手 よしながふみ、待望の初対談集
第1章 やまだないと×福田里香「私たちの大好きな少女マンガ」
第2章 三浦しをん
その1「フェミニズムはやっぱり関係なくないのよ」
第3章 こだか和麻「ボーイズラブじゃないと描けないこと」
第4章 三浦しをん
その2「やおいは男同士でなくてもいい」
第5章 羽海野チカ「メディア化するということ」
第6章 志村貴子「表現は選択できない」
第7章 萩尾望都「マンガ＝24年組というくらい…」
このラインナップを前に素通りできる人っているんでしょうか。
いや、普通にたくさんいるんでしょうけどね。
でも、あれですよ。私的に、このラインナップになにも感じない人がいるなんて信じられないってくらい、もう、きらめくような豪華メンバー。
しかも対談の内容がマンガとくれば、もう、垂涎ものです。
よしながさんは、作品から感じたイメージまんまの語り口でした。
ものすごくクレバー。ていうかスマート？ 頭の回転がものすごく早いタイプの賢さではなくて、センスがずば抜けて良くなおかつシャープな感じがしました。あ、や、頭の回転が鈍いっていってるんじゃないですよ？ もちろんそれも早いのですが、センスの鋭さがそれを上まっていて。
あと、ものすごく意識的であるということ。
これはモノ書きなら誰もがそうであるのかもしれないけれど、よしながさんはその中でもさらに一歩先を意識しているのだなぁ、と思いました。
内容としては、少女マンガ、BL、やおい等々。
これがおもしろい。
特におもしろかったのは、第4章の中で出てきたやおいの定義。
やおいといえば「やまなし おちなし いみなし」が語源で、主に女性向け二次創作等に使われる呼称だけど、よしながふみはここで違う定義を持ち出します。
「つまり恋愛関係にない人たちを見て、その人たちの間に友情以上の特別なものを感じた瞬間に、これはやおいだと名付けるわけ。ふたりの関係が性愛に踏み込んでいたら、それをやおいとは言わないんです。」
目から鱗！
その例として『陽の末裔』の咲久子と卯乃、『きらきらひかる』の杉と月山、『ケイゾク』の柴田と真山、『TRICK』の山田と上田があげられています。
そして、『ブロークバック・マウンテン』を引きあいに出し、あれはセックスしちゃってるからやおいではない、と断じます。
うわぁ、なるほど、ものすごい納得できる。
第5章での羽海野さんとの対談の中にもこの話題は出てきていて、『ハチクロ』でも「あゆとはぐちゃんは、ちょっとやおいっぽい」、「男女でも例えば、森田と山田。困ったらすぐ飛んでいくけどべたべた仲良くはない。で、困ったら手を差し伸べるって言う。そういうのを描きたいなぁと思った。」と仰っていて。
そのとき、脳裏には「そしたらまたポカリ買ってやるよ」っていう森田さんの声が響いてきて、うん、やおいってのは関係性そのもののことなのだなぁ、としみじみ思った。
もうひとつ強烈だったのが、これまた羽海野さんとの対談での「メディア化するということ」について。
メディア化といえば、『西洋骨董洋菓子店』『ハチミツとクローバー』と、それぞれメディアとして展開された経験を持つお二人。
正直、いちファンとしては苦々しい思いを隠しきれないのですが。
「多分誰一人として「もっと宣伝になるから」という理由じゃないのよ。メディア化を受ける理由ってのは。」
「同じクリエーターである人が「私はあなたのマンガに自分の一年間かけます」って言ってくれたことが、すごい嬉しいんですよ、やっぱり。」
はぁ〜。
創作者の立場で考えると、確かにそうなのかもしれないなぁ。
いままではどうしても商業的理由しか思いつけず胸くそ悪い思いを抱いてきましたが、少しだけ、見る目が変わった瞬間でありました。
まぁ、メディア化して欲しくないという思いは変わらないんですけど。
他にもおもしろい話はたくさんあって、というか、全編おもしろい話しか載ってないと言っても過言ではありません。
是非、マンガに興味のある方はお手にとってみることをおすすめします。
