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橋爪 大三郎・大澤 真幸 / 講談社

中央公論で新書大賞2012に選ばれたという記事で興味を引かれ、その後にネットで評判が割れているのを見たので買ってみました。

読んでみると素直におもしろかったです。
西洋、もしくは近代社会を理解するには「キリスト教」を外すことはできない。という視点から、著者二人の対談形式でつづられています。

前から、福音書が複数あり、それぞれが相違するというのが不思議だったんですけど、それに対する回答がシンプルでわかりやすい。
「(前略)相対性理論はアインシュタインが発見したから真理なわけではない。他の人が発見しても真理です。同様に、仏教の真理は、シッダルタが言ったから、あるいはシッダルタが覚ったから真理なわけではない。
しかし、キリスト教の場合には、そうはいきません。イエスについての出来事とは独立に、イエスの言ったことだけを信じる、というわけにはいかないのです。(中略)イエスが生まれ、いろいろなことがあった後に死んで、そして復活したという出来事は、キリスト教の真理の中心です。(後略)」
だからこそ、キリストの言行録である福音書が聖典となった。けれども、言行録は他人が見て書いたもので、神の言葉を記したものではないから、ブレがあっても不思議ではない。なるほど明快だ。

また、以前『バチカン奇跡調査官 黒の学院』の感想の中で、「信仰と科学、一見すると相容れないこの二つ」と書きましたが、これが大きな間違いだったということがよくわかりました。
信仰と科学は相容れないどころじゃない。一神教を信仰するからこそ、科学を信じられるんだ、ということ。
正直、資本主義的貨幣経済もキリスト教を経由することで生まれた、という部分は駆け足すぎてよくわからないんですが、近代合理主義と科学が信仰の末に生まれたというロジックがわかってしまえば、西洋、もしくは近代社会をキリスト教から読み解いていくということの有意義さは一目瞭然でした。
作中で著者が何度も強調していることですが、「キリスト教から脱したと見えるその地点こそが、まさにキリスト教の影響によって拓かれている。」。なるほど然り。おもしろいですねぇ。


ところで、冒頭、ネットで評価が割れていると書きました。そうした批判に目を通したんですが、的外れだなぁ、というのがその印象でした。
どうやらこの本には多くの間違いが存在しているらしいのですが、列挙されている間違いを見ると、完全なる誤認から解釈の問題まで、多岐にわたっています。
どうやらこの本を批判する人たちは、新書に専門書と同等の精確さを求めているようです。
けれど、はっきりいってそれって無理なことだろうと思います。そもそものボリュームが違う。省略する部分、言葉足らずとなる部分があっても仕方ない。正確無比な表現を目指すよりも、もっと文脈を読み取る努力をすべきだと思います。

また、あくまでもこの本は「『キリスト教』とうロジックで西洋、もしくは近代社会を読み解こう」という趣旨のもと、キリスト教を著者なりの解釈で語っている本です。
それに対し、「西洋を理解しようというお題目を掲げながら西洋一般の解釈とは違う」とか「著者自身の勝手な解釈だ」と批判するのは見当違いもはなはだしく、ただ単純に、批判者自身の読解力のなさ、理解力の低さ、器の小ささを露呈するだけだと思うのですが如何。

まぁ、もちろん「だから間違っていてもいいんだ」というつもりはありませんが。なにぶん僕はキリスト者でも神学者でもないので、どこがどう間違っているのかを指摘はできません。それでも著者がなにを言いたいのかはわかったし、新書なんてそれで十分だとも思います。


読後、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』を再読したくなりました。
世界をある一定の視点から読み解いていく、というのは、たとえそれが著者の独善であったとしてもおもしろい。(もちろん、独善でないほうが良いに決まっているのですが。)
文庫にもなったみたいだし欲しいなぁ、と思いつつ、さらにその文庫がブックオフに並ぶ日を待ちわびている今日この頃なのでした。
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