垣谷 美雨 / 幻冬舎
気になるタイトル、とコメントしたら、貸してくれました。
ほんと、過激なタイトルですよね。
しかし。
「濃厚とんこつラーメン!」という幟に惹かれて食べてみたら、超あっさりしょうゆラーメンが出てきた、みたいな感じでした。
70歳になったら安楽死しなければいけないという法案が成立し、施行を2年後に控えた日本。
口先だけ優しく自分本位の夫、エリートコースから転落し引きこもる息子、家を出て行き派遣社員として暮らす娘、寝たきりでわがまま放題の義母、そして介護に明け暮れる妻、という構成の家族のお話でした。
The・テンプレといった設定の家族ですが、だからこそ、そこに七十歳死亡法案というアイディアが活きる可能性がみっしりと秘められていたと思うのですが。
登場人物みんな誰一人としてひねくれていないし、ストーリー展開も単調だし、ご都合主義的展開で万事上手くいくし、どうしてもこれといった旨みが出てこない。
家族それぞれにフォーカスが当てられているんですが、いかんせんボリュームが足りなさすぎる。表面だけさらって掘り下げられないので、ぼやぼやとした印象しかつかめない。結局誰も彼もが中途半端に「いい人」になって終わってしまう。
群像劇にもなりきれず、かといって誰のための物語なのかも判然としないまま、主人公不在で終わってしまいます。
設定だけの一発芸で、小説としては並以下。
ただし、問題提起と思考実験としてはありだと思いました。けれど、絶対的に物足りない。
こうしたテーマを扱うには、まだまだ著者の力不足だったように思います。
もったいなさが目立つ作品でした。
残念。