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青土社

特集*荻原規子――『空色勾玉』『西の善き魔女』、そして『RDGレッドデータガール』…夢見る力の無窮

ユリイカはたまにとんでもない特集をしてくれるので大好きです。
で。
今回はRDG完結とアニメ化にひっかけて(だと思うんですけど)の荻原規子特集。
これは買わずにはいられません。

特集の冒頭を飾るのは、「荻原規子×上橋菜穂子×佐藤多佳子」の鼎談。
このメンバーによる鼎談は結構いろんなところで見ますが、この三人が集まっておもしろくないはずがない。
物語の紡ぎ手と、一ファン。この二つの視点が入り混じる中でのお話はとても刺激的でおもしろかったです。
上橋 物語って語られたことだけじゃなくて語られなかったことを感じられたときに、初めてその世界が見えることがある。

この上橋さんの発言がすごくしっくりきます。
あれもこれもと言葉と尽くして語られるのと、あることは語りながらあることはあえて語らない。このふたつを比べたとき、後者の方が圧倒的に世界を感じられる。
自分が見てきた物語はある一面でしかなく、別の面に光を当てれば、また別の物語がそこにはある。そうした懐の広さがあってはじめて、「作り物」から脱却した「世界」が立ち顕れるのだと思います。

この特集では、実にさまざまな人々がRDG、そして荻原作品について語っています。
本当にいろんな見方、読み方、紐解き方があるのだなぁ、と感心してしまいますが、中でも、斎藤環さんの「スサノヲコンプレックス、あるいは換喩的調停者」がおもしろかった。というか、すごく感心した。

『空色勾玉』の解説で、中沢新一さんが光と闇――生と死の対立に対し、記紀はその仲介者の存在を描くことに失敗している、と述べた後、荻原さんはその失われた仲介者を発見する物語を描いたのだ、と評しています。
斎藤さんはそこに賛意を示しつつも、ひとつの疑義を投げかけます。
果たして本当にそうなのだろうか。
 私は基本的に丸山真男の古事記解釈に依拠するものである。(中略)そもそも日本神話にあっては、「光と闇」「生と死」という対立そのものが存在しない、ということである。ということはすなわち、中沢の指摘するような「自然と文明」という対立もまた存在しないことになる。いや、さらに言えば、そもそもこうした二元論的対立によって物語が駆動されないところが、日本神話の特徴である、とすら言いうる。

 存在は誰かが「つくる」のではない。ただひたすら「なる」のだ。そこでは創造者と被造物の関係性が融合・連続してしまっている。

 さらに丸山の指摘を敷衍するなら、日本神話はギリシャ神話や創世記を神話の定型とみなし得たとして、通常の意味での「神話」の体をなしていない、とすら言いうるかもしれない。そもそも、そこには“起源の物語”すら欠けている。つまり「国産み」は描かれるが、「創世」は描かれていないのだ。

中沢新一さんの解説を読んだときはひどく感心したものですが、今回はさらに目から鱗。
言われてみれば、確かに日本神話にはもともとそうした二元論的対立は存在しないかもしれない。神々は誰かの意思によって生まれるというより、自然に「なる」ように顕れ、死んだのちにも黄泉の国や根の国で活動を続ける例もある。生も死も等しくある状態へ「なる」というレベルで語られているのではないか。
こうした考察を経て、斎藤さんはこう結論づけます。
 そうだとすれば、荻原規子が試みたことは、「仲介者の発見」どころではない。彼女は「いきほひ」だけで構造性に乏しかった日本神話に、さまざまな対立と象徴性を導入しつつしっかりとした構造を与え、いわば「再神話化」を試みたのではなかったか。

なるほど。
なぜこんなにも『空色勾玉』に惹かれ、そして荻原作品に惹かれるのか。その理由の一端がわかったような気がしました。今回の特集の中で、この斎藤さんの文章を読めたことが何よりの収穫だったかもしれない。


しかし、1巻の表紙でもある、この表紙絵の美しさよ。
この酒生駒子さんの表紙は本当にすばらしいです。
泉水子の少女性と神性が見事に顕れていて、触れれば消えてしまいそうな危うさと、これから成長していくであろう少女の最後の稚さが焼き付けられていると思います。
良いですねぇ。
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